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馬体の見かた講座
馬を見る上での考え方から各馬体パーツの基本、種牡馬毎の特徴、専門家へのインタビューも
治郎丸敬之 著 / 連載中

61.【応用理論】(4)馬体のバランスを実例から見る

基礎編の内容をベースに、より実践的な馬体の見かたを、「スター馬体チェック法」として解説する「応用理論編」。 今回は、「バランス」について語りたいと思います。スター馬体チェック法の中でも、最も重要でありながら、最も見極めが困難なポイントです。言葉で伝えるのが難しいところはありますが、できるだけ分かりやすく説明したいと思いますので、ぜひついてきてください。

馬体の「バランス」とは

「バランス」とは、馬体全体をシルエットとして見た時の、以下4点のバランスのことです。

・胴体
・脚の長さ
・首の太さ、長さ
・背中(腰)の角度

胴体については、応用理論編の前回「【応用理論編】 3 胴体から距離適性を見分けるには」でお話しました内容となりますので、今回は脚、首、背中について解説していきたいと思います。

脚が短い馬、長い馬

サラブレッドは、体高(き甲から脚先まで)と体長(胸から尻の先まで)が基本的に等しいです。つまり、胴体が短い馬は脚も短く、胴体が長い馬は脚も長い。ということは、胴部が詰まっている短距離馬は脚が短く、胴部に伸びがある長距離馬は脚が長い傾向にあるということです。

短距離馬は脚が短いため、ピッチ走法で走るので、スピードに乗りやすいのです。短距離馬の見分け方は、重心の位置を意識すると良いですね。短距離馬は脚が短い分、長距離馬に比べて重心の位置が低くなります。


それでは、当サイト名馬の募集カタログから、全体のバランスとして脚が短い馬を実際に見てみましょう。さすがに名馬ぞろいということもあり、極端に脚が短い馬を探すのは苦労しました。その中でも、比較的、脚が短く、重心が低い馬体であることが分かりやすいロールオブザダイスを選びました。


ガッチリした胴に短めの四肢が付いています。脚が短いため、馬体全体の重心の位置が低く映ります。馬体だけを見ると、ピッチ走法で走るため、明らかにダート戦や短い距離が合いそうです。実際には、ロールオブザダイスはダート戦の中距離で活躍しましたので、馬体からだけでは分からないスタミナを内包していたということになります。


対して、長距離馬は脚が長く、ストライド走法で走るため、スピードに乗るのに時間がかかります。人間と比べると、どのサラブレッドも脚は長く見えるのですが、その中でもスラっと脚が伸びている馬は、典型的な長距離馬であることが多いです。

こちらも名馬の募集カタログから、全体のバランスとして脚が長い馬を実際に見てみましょう。脚が長い名馬はたくさんいましたので、その中からも特に分かりやすいマイネルキッツを選びました。


脚が長くて、スラっと伸びているのが分かります。全体のバランスの中で、重心の位置も高い。ストライドが大きく、いかにも長い距離が合いそうです。マイネルキッツは馬体どおりの成長を遂げて、2009年の天皇賞・春を制し、翌年は2着したように、名ステイヤーとして活躍しました。


パッと見た瞬間に脚が短いな、重心が低いなと思ったら短距離馬であり、脚がスラっと長いな、重心が高いなと感じたら長距離馬です。どちらとも言えないのであれば、平均的な脚の長さの馬ということになります。必ずしも、脚の長さだけで短距離・長距離を見分けられるわけではなく、どっちつかずの脚の長さの馬の方が圧倒的に多いのが実際です。そんな中でも、パッと見て脚の長さの違いに気づくならば、その馬は典型的な短距離・長距離馬の馬体です。

首の太さ、長さ

サラブレッドが走るために、首は重要な役割を担っています。 …
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第61回 馬体のバランスを実例から見る
著者
治郎丸敬之
新しい競馬の雑誌「ROUNDERS」編集長。週刊Gallopにてコラムを連載中。当コラムの書籍も発刊
馬体の見かた講座
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