
なぜ社台ファームは坂路を「つくり直した」のか
吉田哲哉氏インタビュー 前編
日々サラブレッドと向き合いながら、馬を見ることを仕事としている競馬関係者の方々へのインタビュー。今回は、社台ファーム副代表で、社台レースホース代表でもある吉田哲哉さんの登場です。同クラブは現3歳世代の勝ち上がり率が5月時点ですでに前年世代を上回り、全クラブトップを争う位置につけるなど、堅実に成績が上向いていることから、お話をうかがう機会を頂きました。
前編である今回は、最近リニューアルした社台ファームの坂路コースを題材に、坂路が馬におよぼす育成効果についてお話をうかがいます。経営的視点から、ふだんのインタビューとは少し趣が異なるお話が聞けそうです。また次回の後編では、せっかくですので今年の新規募集馬を、実馬を交えて哲哉氏自ら解説頂く予定です。
前編である今回は、最近リニューアルした社台ファームの坂路コースを題材に、坂路が馬におよぼす育成効果についてお話をうかがいます。経営的視点から、ふだんのインタビューとは少し趣が異なるお話が聞けそうです。また次回の後編では、せっかくですので今年の新規募集馬を、実馬を交えて哲哉氏自ら解説頂く予定です。

社台ファームの綺麗に手入れされた庭園の木々の間を抜けていくと、黄色に黒の縦縞模様の勝負服を着た人形が私たちを迎えてくれました。アメリカの牧場に来たのかと錯覚してしまったのは、吹き抜けるような空の広さゆえでしょうか。事務所を訪れると、吉田哲哉さんがジーンズ姿で颯爽と現れました。若きパワーに溢れ、初対面のときからそうでしたが、人との間に壁をつくらない人懐っこさと実直さを兼ね備えた人柄が伝わってきます。今回は貴重な時間を割いて、インタビューに応じてくださいました。

吉田哲哉さん プロフィール
社台レースホース代表、社台ファーム副代表。社台ファームの次世代リーダーとして陣頭に立ち改善を進める。社台ファーム代表である吉田照哉氏の長男。(社台レースホースは社台サラブレッドクラブの馬主名義クラブ法人)
― 昨年末に中山競馬場で初めてお会いしたときは、相撲など競馬とは関係ない話ばかりしましたが、今回は私も一人の一口馬主として、真剣にお話しを聞きにやってきました(笑)。社台ファームと、これから募集開始されるクラブの1歳馬たちについて教えてください。
まずは現時点(取材時点5月22日現在)において、現3歳世代の勝ち上がり率が44%とクラブ別の首位に立ちました。
吉田哲哉氏(以下、吉田) ありがとうございます!素直に嬉しいです。どの馬にも会員さんがついてくださっていますので、最初の大きな目標として、まずは勝たせていかなければならないと常に思っています。勝ち上がることで次につながりますし、社台サラブレッドクラブはいいなと思ってもらえるのではないかと考えています。
― 社台サラブレッドクラブのような規模の大きいクラブで、昨年の勝ち上がり率を5月末の時点で超えているのは、驚異的な数字だと思います。要因はなにかありますか?
吉田 これというひとつの理由は思いつかないのですが、クラブに良い馬を集めているからではないでしょうか。つまり、これだったら走るだろうという馬をクラブに入れていますし、毎年試行錯誤しながらもきちんとオペレーションを回しているからこそ、このような結果につながったのだと考えています。世代全体の成績は種牡馬の偏りなどによって左右されてしまうこともあり、なかなか人為的に操作できない部分も多いため、ここが効いたとか、こういう理由だったと簡単にお答えできないのが正直なところです。
2歳の夏に思ったほど使えなかったといった反省材料もあることから、今は調教師さんとの入厩に関しての意思疎通を強めていますし、牧場での育成に関しては、坂路施設も大きく変わり、肉体的にもさらなる負荷を掛けられるようになりました。やりすぎてもいけませんが、もう少し攻めてみてもいいのではないかと今は考えています。
まずは現時点(取材時点5月22日現在)において、現3歳世代の勝ち上がり率が44%とクラブ別の首位に立ちました。
吉田哲哉氏(以下、吉田) ありがとうございます!素直に嬉しいです。どの馬にも会員さんがついてくださっていますので、最初の大きな目標として、まずは勝たせていかなければならないと常に思っています。勝ち上がることで次につながりますし、社台サラブレッドクラブはいいなと思ってもらえるのではないかと考えています。
― 社台サラブレッドクラブのような規模の大きいクラブで、昨年の勝ち上がり率を5月末の時点で超えているのは、驚異的な数字だと思います。要因はなにかありますか?
吉田 これというひとつの理由は思いつかないのですが、クラブに良い馬を集めているからではないでしょうか。つまり、これだったら走るだろうという馬をクラブに入れていますし、毎年試行錯誤しながらもきちんとオペレーションを回しているからこそ、このような結果につながったのだと考えています。世代全体の成績は種牡馬の偏りなどによって左右されてしまうこともあり、なかなか人為的に操作できない部分も多いため、ここが効いたとか、こういう理由だったと簡単にお答えできないのが正直なところです。
2歳の夏に思ったほど使えなかったといった反省材料もあることから、今は調教師さんとの入厩に関しての意思疎通を強めていますし、牧場での育成に関しては、坂路施設も大きく変わり、肉体的にもさらなる負荷を掛けられるようになりました。やりすぎてもいけませんが、もう少し攻めてみてもいいのではないかと今は考えています。
坂路を「つくり直した」理由
― さらに使い出しの時期を早めることができたら、次のステップにつながりやすくなりますね。そのリニューアルされた社台ファームの坂路コースについても詳しく教えてください。
吉田 昨年末に完成した坂路は、地盤を4m深く掘り、傾斜を3.5%(栗東の坂路と同じ勾配)まで上げました。坂路を改修する前は、電車の線路と坂路が平行に走るような形だったので、電車と併せ馬をしている感じでした(笑)。今は線路よりも上に坂路があります。坂路は全長が1000mで、3.5%の勾配部分が500mの長さです。時計は4ハロンを取れるようになっていますね。また、ダートはやめてウッドチップに一本化しました。
吉田 昨年末に完成した坂路は、地盤を4m深く掘り、傾斜を3.5%(栗東の坂路と同じ勾配)まで上げました。坂路を改修する前は、電車の線路と坂路が平行に走るような形だったので、電車と併せ馬をしている感じでした(笑)。今は線路よりも上に坂路があります。坂路は全長が1000mで、3.5%の勾配部分が500mの長さです。時計は4ハロンを取れるようになっていますね。また、ダートはやめてウッドチップに一本化しました。

リニューアルされた直線坂路のゴール付近から
間近で見ると勾配とスケール感に圧倒される
写真左手側の木々の向こうには線路が走っている
間近で見ると勾配とスケール感に圧倒される
写真左手側の木々の向こうには線路が走っている
― これほどの大改革に踏み切ったきっかけや理由は何でしょうか?
吉田 最近、調子の良い牧場、たとえばノーザンファームさんや三嶋牧場さん、ダーレーさんなどは、その牧場で生まれた(生産した)馬だけが強いわけではなく、外から買ってきた馬でも走らせていますよね。 …
吉田 最近、調子の良い牧場、たとえばノーザンファームさんや三嶋牧場さん、ダーレーさんなどは、その牧場で生まれた(生産した)馬だけが強いわけではなく、外から買ってきた馬でも走らせていますよね。 …
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