2023-03-26現在データ
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一口クラブの分類・特徴紹介

現在、日本には大小あわせて20を超えるクラブが存在しています。

個別のクラブのカタログやWebサイトを見ただけでは、客観的な特徴が掴みにくい面もあるかと思いますので、このページでは各クラブのタイプについて、詳しく解説していきます。

基本的な考え方としては、各クラブは大きく分けると

募集馬の仕入れ系統
募集口数
募集価格帯

によって分類することが可能です。その他にも募集時期、冠名の有無、血統傾向、サービス内容などにさまざまな特色があり、複数のクラブに入る意味もその多様性を満喫することにありますが、ここでは上記の分類軸を中心に、クラブのタイプを解説していきます。


牧場系とバイヤー系

まず、一口馬主クラブは募集馬の仕入れ系統により、「牧場系」「バイヤー系」に大別されます。

牧場系」とは、生産牧場が母体になり運営されているクラブで、提供馬は基本的に主催/加盟牧場の生産馬です。

バイヤー系」は、クラブがセリや庭先(牧場との直取引)などで馬を買い付けて提供馬を集めるタイプのクラブを指します。

中には生産もバイイングも偏りなく行う、両者の中間タイプのクラブもあり、さらには牧場系でも毎年数頭はセリ等で購入した馬をラインナップに入れることもあります。

また、近年は社台グループが巨大化しており、他の牧場系とは異なる特色が出てきたため、当解説では牧場系をさらに

・社台グループが自グループの生産、育成馬を提供する「社台系
・比較的規模の小さな牧場が多数参画して生産馬を提供する「牧場集合系
・社台系列以外の単独あるいは少数の牧場による運営「独立牧場系

に分けて説明したいと思います。以下の表にそれぞれの形態の特徴をまとめました。

[表1・仕入タイプによるクラブ分類]

牧場系 :参加牧場の直売的形態のため、年度ごとの価格や牝系に一貫性。出資牝馬の仔に出資できる可能性も高い。
:基本的に提供馬は参加牧場の生産馬に限定される
- 社台系 [ 社台TC サンデーTC G1TC キャロットC シルクHC グリーンF]
:国内馬産における最大手社台グループの生産馬。おなじみの良血、活躍馬の仔が多数。
:育成環境、入厩厩舎や騎手のレベルが比較的高く安定。
:出資実績基準や抽選等、人気馬への出資競争率は高め。
:グループ内種牡馬が中心のため、頭数と比較してやや父のバラエティさに欠ける面も。
- 牧場集合系 [ ユニオンOC ターファイトC ローレルC]
:有名種牡馬からマイナー種牡馬、牝系まで、大規模牧場に比べると各牧場の個性が出るためバラエティ豊かな構成。
:比較的希望馬に出資しやすくかつ安価。当歳馬募集も。
:セリ市況や各牧場の参加姿勢の温度差などで、やや質にばらつきが生じやすい。
:各牧場の特徴を掴むまでやや時間を要する場合も。
- 独立牧場系 社台系列以外の単独あるいは少数の牧場による運営
[ ロードTO 大樹RC ワラウカド]
:基本的に各母体牧場の成績、経営方針、特徴等が良くも悪くもストレートに反映されやすい。
バイヤー系 [ 東京TC 友駿HC TCライオン 広尾TC DMMバヌーシー YGGOC インゼルTC 京都TC]
:牧場系と比較すると、毎年新鮮味のあるラインアップとなりやすい。
:柔軟な発想で1000口以上の募集形態など、特色あるサービスを提供するクラブが比較的多い。
:形態上、買い付け価格に経費などが上乗せされるため、若干募集価格は高くなりやすい。
折衷系 両者の折衷的形態。生産馬も購入馬も片寄ることなく提供
[ ラフィアンTC ウインRC ノルマンディー]


大口募集と小口募集

各クラブは、提供形態での区別の他に、募集口数の多少に伴う、一口あたりの大小によっても特徴があらわれます。 例えば、同じ社台系で「2,000万の馬に一口出資」する際でも、40口募集の社台TCでは一口50万円となり、大口の金額といえますが、400口募集のキャロットCでは一口5万円と、小口での出資が可能です。

1口あたりの出資持分比率でみると、40口募集では2.5%、400口募集では0.25%となります。この出資持分比率がそのまま、出資金や月額維持費、配当金といったお金の流れにおいての、分配および支払いの比率に反映されますので、単純に、大口出資はハイリスク・ハイリターン、小口出資はローリスク・ローリターンと考えていいでしょう。

また、クラブによる募集口数の違いは、1頭当たりの出資者人数の違いも生み出します。複数口の出資をすれば、例えば「400口募集で10口出資」は「40口募集で1口出資」と出資持分比率的には2.5%で同等になりますが、やはりどのクラブでも、1頭あたりでは1口のみ出資する会員が最も多いと聞きますし、当サイトの会員データでも確かにその傾向が見られます。また、小口クラブでは多くの場合、一次募集申込における出資口数の上限が設定されています。

そのため、小口募集クラブの場合は、1頭あたりの出資者が数百人規模となることで、それだけ競馬場やWeb上での、出資者間の交流や、他の出資者の考えを見聞きする機会も多く、多数の人と共有していることを実感しながらの、小口クラブならではの「にぎやかさ」がある一口ライフと言えるでしょう。あまり予算を気にすることなく、多数の馬に出資できるのも大きな魅力です。

一方、大口募集のクラブでは、1頭の馬あたりの出資者が数十人規模となることで、例えば「馬名応募」や「口取り式応募」の競争率が、小口クラブに比べて10分の1程度にグッと下がるなど、一口ライフを送る上で、大口クラブならではの「快適さ」が増し、あまり他の出資者と共有していることを意識することなく、より出資馬のオーナー気分が強く味わえます。また、社台系の大口クラブでは、その独特の募集ルールにより、出資時の争奪戦においても、実際のセリやプロ野球のドラフト会議さながらに、知力・財力・時の運が求められる、緊迫感のある雰囲気を楽しむことができます。

100口から200口募集のクラブは、両者の中間的な存在で、ここでは中口クラブと分類します。これらのクラブには、規模的にも中堅に位置するクラブが多く、過度な出資競争も少ないため、経済的にこのぐらいの出資持分比率がしっくりくる方には、中口クラブはまったりと居心地の良いクラブになるでしょう。のちほど説明しますが、この居心地の良さというものは、一口ライフを楽しむ上で、地味ながら重要な要素となってきます。


一口クラブの黎明期は、現在ではもう見られない、20口程度の募集からはじまりましたが、90年代後半あたりから小口募集を取り入れるクラブが現れはじめ、現在ではクラブ数も増えて会員それぞれの収入やライフスタイル、馬の好みに応じてさまざまなクラブ法人から選択することが可能になり、業界全体で見ると幅広い門戸が開かれているといえるでしょう。

それぞれの形態にそれぞれの良さがあり、また出資の選択肢を増やす意味からも、2つ以上のクラブを掛け持ちして楽しむ方が非常に多いのがこの趣味の特徴の一つでもあります。(当サイト会員の中では約40%の方が複数クラブで出資中というデータもあります)

なお、各クラブの会員数については一般には公表されていませんが、1,000人台から10,000人を超えるクラブまで様々です。規模を見分ける上では、単純に募集頭数及び口数が多いほど、また売れ行きが好調なほど会員数が多いクラブと考えて頂ければ概ね間違いありません。



募集口数と募集価格帯によるクラブ分類

以下の表では、各一口馬主クラブの運営形態、募集口数を軸として全クラブを12のタイプに分類しました。最近では多様な募集形態を採り始めているクラブが増えているため、一概に分類できない部分もありますが、さらに下の平均募集価格帯による分類表も併せて、クラブ選択の目安として参考にしてください。


[表2・募集口数及び仕入タイプによるクラブ分類]
※募集口数が複数パターンあるクラブは中心的な口数で分類
大口募集
(~50口)
中口募集
(100~200口)
小口募集
(400~口)
社台系 社台TC
サンデーTC
G1TC
グリーンF キャロットC
シルクHC
牧場系 ターファイトC
ユニオンOC
ロードTO
ローレルC
ノルマンディー
大樹RC
ワラウカド
バイヤー系 東京TC
広尾TC
友駿HC
TCライオン
DMMバヌーシー
YGGOC
インゼルTC
京都TC
折衷系 ラフィアンTC
ウインRC


[表3・平均募集価格と口数によるクラブ分類]
()内数値は平均募集価格、各平均募集価格は最近3世代の平均値
低価格帯中心
平均1700万円未満
中価格帯中心
平均1700~2700万円
高価格帯中心
平均2700万円超

G1TC (2638万)
サンデーTC (4171万)
社台TC (3218万)

ユニオンOC (1605万)
グリーンF (1789万)

大樹RC (1622万)
YGGOC (1449万)
ローレルC (1440万)
友駿HC (1311万)
京都TC (999万)
広尾TC (2621万)
ウインRC (1837万)
インゼルTC (4076万)
キャロットC (3629万)
TCライオン (3554万)
ワラウカド (3403万)
シルクHC (3376万)
東京TC (3198万)
ロードTO (2946万)
※募集価格=1頭当たりの募集総額

最初のクラブの選び方は?

いかがでしょうか。各クラブのイメージが多少なりとも湧いてきましたでしょうか。とはいえこれだけの数があると、逆に目移りしてしまうかもしれませんね。

最初のクラブを選ぶ際は、「実際にかかる費用は?」で触れたとおり、まずはご自身にとって無理のない維持費を考えた上で募集口数タイプで絞り、さらに形態や募集価格帯からクラブを選ぶ形がスムーズではありますが、最終候補から決めきれない場合は、維持費だけは考慮したうえで、最初はとにかく気に入った馬を目当てに入会することも実はある程度は理にかなっています。その馬に似た背景、価格帯の馬が今後もそのクラブで募集される確率は必然的に高いため、結果的に自分に合った、居心地のいいクラブになる可能性も高いといえるからです。

ちなみに一般的な会員制クラブ、例えばスポーツジムやゴルフ場、リゾート会員権などの「施設」を共有するサービスとは異なり、一口クラブ会員にとってはあくまで「出資馬」が主役です。そのため、たとえ同じクラブに入っていても、どの馬に出資してきたかで、クラブに対する主観的な満足度は会員ごとに大きく変わります。また自分が所属したことがないクラブのサービス等を詳しく知る機会もほとんどないため、クラブを決める上での既会員の方の意見は、もちろん参考になる部分もあるとは思いますが、必ずしも当てになるとは限らない世界です。

自分の好みを整理してみることも

初心者の方からは「どのクラブがおススメですか?」と聞かれることも多いのですが、上記の他にその方の収入および趣味に費やせる予算や、また特に競馬観によってもマッチするクラブは変わってくるため、実はなかなか難しい質問になります。例えば実際の馬主さんで考えてみた場合、同じ大馬主でも「サトノ」の里見オーナーと「メイショウ」の松本オーナーとでは購入する馬の志向性は明らかに異なります。僭越ながら牧場系の分類から当てはめてみると、里見オーナーは社台系の高価格帯、松本オーナーは牧場集合系の中~低価格帯がストライクゾーンといえるでしょうか。

当ページで解説してきた通り、クラブのタイプによってこうした志向性はある程度決まっていますので、これまでの競馬歴から、応援したくなる馬のタイプを振り返ることで、まずはご自身の志向性を整理してみるのも効果的かもしれません。分かりやすい図式で例えると、大牧場の高額良血馬が王道を歩むことに魅力を感じるのか、それを打ち負かす中小牧場出身馬やマイナー血統馬を応援したくなるのか。有名馬で言えば、ディープインパクトやサトノダイヤモンドは前者、ゴールドシップやキタサンブラック、昔の馬ではオグリキャップなどは後者に分類されるでしょう。


その他、実際に始めてみないと実感できない「好み」が関係する少し意外な要素として、「勝負服」もあげられます。一口馬主は、いざ出資馬のレースになれば、主にゼッケン番号や帽子で馬を見分けていた馬券ファン時代とは異なり、クラブの勝負服を目印に素早く愛馬をさがすことになります。そこで、自分がどうしても好みではない色やデザインの勝負服だと、どうでしょうか。これから何十レース、何百レースも見ていくことになります。もちろん、まず勝負服のデザインでクラブを決めましょうなどと推奨するわけではありませんが、入会するクラブに迷われた際には、勝負服のデザインが好みかどうかは、十分検討に値する項目です。


またサービスや雰囲気面での違いなどは、実際に複数のクラブに入ってみないとなかなか実感できない部分もありますし、なにより出資馬の選択肢を増やす意味でも、加入クラブを増やしていくことを前提にされてもいいでしょう。

複数のクラブを掛け持ちしていると、運営方針に対する相性の他にも、面白いことにクラブ全体の成績に関わらず、不思議と自分と成績相性の良いクラブ、成績相性の悪いクラブというのも傾向として出てきたりもしますので、そこから「メインにするクラブ」、「サブにするクラブ」を決めていくという形もとれます。

居心地の良さと複数のクラブに入る意味

ところで、初心者の方は、なぜ成績に波や優劣が生じやすい業界で、これだけの数のクラブが安定して存続しているのか、あるいは不思議に思われるかもしれません。ここには、外からは見えにくいのですが、「クラブの成績」と「居心地の良さ」という、両立しづらい2つの要素が密接に作用しています。

一般に、所属馬の成績が良いクラブほど、新規入会者が多い一方、退会者は少ないため、会員が増加していく傾向にあります。新規入会者は大レースでの活躍が多いクラブほど、また退会者は勝ち上がり率が低いクラブほど、多くなる傾向にあります。その結果、活躍馬が多いクラブほど、希望馬に出資しにくい環境になっていきます。つまり、クラブの成績に比例して居心地の良さや、自分の成績も上がるとは必ずしも限らないというジレンマが、必然的に生じる構造になっています。

「居心地の良さ」と言われても初心者の方にはピンとこないかもしれません。たとえば、せっかく気に入った馬を見つけても、競争に敗れて出資ができなければ、大きなストレスに繋がります。特に新規入会者が人気馬に出資することは、人気のクラブほど難易度が高いのが現状です。

こう聞くと、あるいは「会員が増えたクラブは、募集頭数をどんどん増やしていけばいいのでは?」と思われるかもしれませんが、JRAには一馬主が同時に入厩させることができる頭数の上限があるため、すでに大きな所帯のクラブでは、募集馬の増枠はきわめて困難であり、会員が増え続けると、いずれ需要の増加に供給が追い付かない状態になっていきます。

人気のクラブでは他にも、牧場での愛馬見学、口取り式、各種イベントなど、クラブ全体で定員が限られており、増枠が困難な類のサービスの予約なども、時には人気アイドルのコンサートチケット予約並みの激戦状態となります。これは特に小口クラブほどその傾向は高まります。


このように、クラブライフを送る上での快適性とクラブの競走成績は、なかなか両立が難しい業界ですが、ここでも先ほどのメインクラブ・サブクラブの考え方が役に立ちます。たとえば、メインの人気小口クラブではあくまで出資リターンを追求する一方、北海道への個人旅行がてらの牧場・出資馬の見学は、予約が取りやすく、融通も利くサブの中堅クラブや、大口クラブを中心に楽しむ、といった使いわけでもいいでしょう。

経費面では月会費がクラブ数分増えますが、逆に言えば会費のコストだけで、正式な馬主のようなしがらみも特になく、さまざまなクラブを自由に出たり入ったり出来る点が一口の世界の魅力でもありますので、一口馬主に慣れてきて、経済面でも余裕があれば、複数クラブでの運用をお勧めします。