レポートNo.013 |
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一口馬主による騎手評価ランキング【2016年度】
騎手の活躍度合いを知る上では、競馬ファンにお馴染みの、勝利数による「騎手リーディング」の順位が大いに参考になります。好みの差はあれど、リーディング上位の騎手が、優れた腕前を持っていることに疑問はないでしょう。
しかし一方で、リーディングの順位が、必ずしも騎手の実力の序列とはいえないことも、競馬ファンには周知の事実です。
騎手が数多く勝利するためには、数多くのレースに乗ることと同時に、いかに有力な馬を集めるかという、馬の質量が非常に重要です。つまり、リーディングには、騎手の腕前以外にも、営業力や、契約するエージェントの実力も加味されているといえるでしょう。実力がほぼすべての、プロ野球選手の打率ランキングなどとは、この点において少し意味あいの違いがあります。
本稿では、このリーディングでは見えない部分を補完すべく、当サイトユーザーの皆様による、各レースの騎乗採点データの平均値を基に、独自の評価ランキングを作成して、リーディングとの比較などを分析していきたいと思います。
しかし一方で、リーディングの順位が、必ずしも騎手の実力の序列とはいえないことも、競馬ファンには周知の事実です。
騎手が数多く勝利するためには、数多くのレースに乗ることと同時に、いかに有力な馬を集めるかという、馬の質量が非常に重要です。つまり、リーディングには、騎手の腕前以外にも、営業力や、契約するエージェントの実力も加味されているといえるでしょう。実力がほぼすべての、プロ野球選手の打率ランキングなどとは、この点において少し意味あいの違いがあります。
本稿では、このリーディングでは見えない部分を補完すべく、当サイトユーザーの皆様による、各レースの騎乗採点データの平均値を基に、独自の評価ランキングを作成して、リーディングとの比較などを分析していきたいと思います。
採点のしくみ、全体的な採点傾向
当サイト、あるいは「Myレース採点」機能にまだ馴染みがない方のために、この採点がどういうものなのか、また全体的な採点傾向を紹介しておきます。
当サイトには「Myレース採点」という機能があり、出資馬登録している馬に限り、レース毎に「総合評価」「臨戦過程」「騎乗」「馬の頑張り」の4つの項目について、レース結果画面から、5段階で評価できる仕組みがあります。今回はこの中で、「騎乗」評価を用いて、データの分析を行います。
一口馬主は、出資馬の実力、強み弱み、得意脚質、仕上がり具合などを詳しく把握した上で、レースでは騎手と出資馬の一挙一動を、スタートからゴールまでジッと注視しながら観戦します。一般人とはいえ、競馬歴は総じて長く、複数人による民主的な評価でもあり、特定騎手の騎乗を評価する上で、まさに適任と言えるでしょう
Myレース採点における、騎乗評価の全体的な点数分布は以下のようになっています。 中間の3点が最多で、以下最高最低に近づくほど少なくなるという、正規分布的な傾向を示しており、統計母集団として偏りが少なく、有意なデータであるといえます。平均評価も3.1と、ほぼ中央の値となっています。
1番人気馬を中心に見る馬券ファンとは異なり、出走馬のオーナー側の視点で見ると、細かくクラス分けされ、同じような実力を持つ20頭近くが参加するレースにおいて、自分の出資馬が、他の全馬を負かして勝利するということが、いかに難しいことかを痛感します。それを日々身をもって体感している一口馬主の皆さんですから、もちろん勝利時の採点は最も高い傾向を示しますが、たとえ負けてしまったレースでも、騎乗については客観的に評価して、高い採点がされる場合もあります。
例えば2着に敗れてしまった場合でも、約20%もの人が5点、約40%が4点と、半数以上の割合で高い採点がされています。逆に、勝利した場合でも、もちろん5点が約60%と最多ですが、残りの約40%は、星を落とした評価をしています。勝利を喜びながらも、騎乗についてはきちんとシビアな目で見ている場合もあるということで、おおむね皆さん客観的で冷静な評価をして頂いていることがうかがえます。
それでは、いよいよ集計結果を見ていきましょう。本稿では2つの切り口でランキングを作成して分析します。
当サイトには「Myレース採点」という機能があり、出資馬登録している馬に限り、レース毎に「総合評価」「臨戦過程」「騎乗」「馬の頑張り」の4つの項目について、レース結果画面から、5段階で評価できる仕組みがあります。今回はこの中で、「騎乗」評価を用いて、データの分析を行います。
一口馬主は、出資馬の実力、強み弱み、得意脚質、仕上がり具合などを詳しく把握した上で、レースでは騎手と出資馬の一挙一動を、スタートからゴールまでジッと注視しながら観戦します。一般人とはいえ、競馬歴は総じて長く、複数人による民主的な評価でもあり、特定騎手の騎乗を評価する上で、まさに適任と言えるでしょう
Myレース採点における、騎乗評価の全体的な点数分布は以下のようになっています。 中間の3点が最多で、以下最高最低に近づくほど少なくなるという、正規分布的な傾向を示しており、統計母集団として偏りが少なく、有意なデータであるといえます。平均評価も3.1と、ほぼ中央の値となっています。
1番人気馬を中心に見る馬券ファンとは異なり、出走馬のオーナー側の視点で見ると、細かくクラス分けされ、同じような実力を持つ20頭近くが参加するレースにおいて、自分の出資馬が、他の全馬を負かして勝利するということが、いかに難しいことかを痛感します。それを日々身をもって体感している一口馬主の皆さんですから、もちろん勝利時の採点は最も高い傾向を示しますが、たとえ負けてしまったレースでも、騎乗については客観的に評価して、高い採点がされる場合もあります。
例えば2着に敗れてしまった場合でも、約20%もの人が5点、約40%が4点と、半数以上の割合で高い採点がされています。逆に、勝利した場合でも、もちろん5点が約60%と最多ですが、残りの約40%は、星を落とした評価をしています。勝利を喜びながらも、騎乗についてはきちんとシビアな目で見ている場合もあるということで、おおむね皆さん客観的で冷静な評価をして頂いていることがうかがえます。
それでは、いよいよ集計結果を見ていきましょう。本稿では2つの切り口でランキングを作成して分析します。
全レースの採点平均値ランキング
まずは、全レースの採点平均値によるランキングです。このランキングでは、各騎手が、今年どれだけ一口馬主を納得させてくれる騎乗をしたかが、端的に分かるはずです。なお、レース数、頭数、採点者数などで、一定の数値を満たさない騎手は除かせて頂いた結果、今回は35人の騎手が対象となりました。
やはりといいますか、昨年JRA騎手界の勢力図を一変させた、2人のJRA所属外国人ジョッキーが、1・2フィニッシュという結果になりました。
中でもC.ルメール騎手の評価が最も高く、2位のM.デムーロ騎手に0.8ポイントの差をつけて、唯一3.5点を超え、見事1位となりました。ルメール騎手は、クラブ馬の騎乗数でも2位となっており、結果として採点者、また採点票数も多いため、サンプル数も十分といえ、今年最も多くの一口馬主を満足させた騎手として、申し分のないデータといえるでしょう。点数を押し上げたのは、なんといってもクラブ馬勝率の高さといえ、.262はダントツのトップで、実に4回に1回はクラブ馬を勝利に導いていたという計算になります。なおこれはルメール騎手の今年の全騎乗における勝率.237を上回っています。
全国リーディングで100勝を超えた騎手は、ルメール騎手を含めて5人いましたが、その中のM.デムーロ騎手、川田将雅騎手、戸崎圭太騎手の3人は、少しリーディングとは順位が入れ替わりましたが、高いクラブ馬勝率を反映して、他の騎手の追随を許さず、当ランキングでも2~4位を占めました。一方で、福永祐一騎手は8位と、クラブ馬勝率の割には少しだけ評価を落とす形となりました。とはいえ、3.20は十分に高い評価です。
上位でリーディングよりも高い評価順位で目が付くのは、5~7位の田辺裕信騎手、浜中俊騎手、北村宏司騎手の3人です。特に田辺騎手は、クラブ馬勝率が上位陣の中ではやや低く、平均単勝人気もリーディング上位陣よりは明らかに低いのですが、入着にとどまったレースでも、出資者を納得させる騎乗をしていたことがデータからうかがえ、純粋に実力が評価されたと考えてもよいでしょう。浜中騎手と北村騎手は、怪我離脱が長かった影響により、リーディングは低めで、クラブ馬の騎乗数もやや少ないながらも、しっかりと勝率を残した点が評価に繋がったといえます。来年、年間を通した数値となった際にどうなるかも注目です。
クラブ馬での勝率が低いわりに評価が高い騎手としては、9位の武豊騎手にもいえ、勝率が1割を切りながらも、高い評価を得ているところは、さすが第一人者といえます。ただ、最近はキタサンブラックに代表されるように、個人馬主での活躍が目立ち、クラブ馬の騎乗数はかなり少ない傾向にあります。
全体的には西高東低の形となっており、関東の中堅、ベテラン勢はやや苦戦気味となりました。その中で、11位の柴田大知騎手は、ラフィアンの主戦という立場で、クラブ馬の騎乗数は全騎手の中でもダントツの1位を記録しながら、あまり他のクラブでは馴染みがないという独特の存在ですが、この順位に食い込んでいるのは、安定した騎乗ぶりをあらわしているといえるでしょう。
2016年度 Myレース採点 平均騎乗評価ランキング
採点 順位 |
騎手名 | 所属 | 採点平均 | クラブ馬 勝率 |
全国リーデ ィング順位 |
---|---|---|---|---|---|
1 | C.ルメール | 西 | 3.54 | .262 | 2 |
2 | M.デムーロ | 西 | 3.46 | .210 | 4 |
3 | 川田将雅 | 西 | 3.40 | .199 | 3 |
4 | 戸崎圭太 | 東 | 3.33 | .208 | 1 |
5 | 田辺裕信 | 東 | 3.26 | .111 | 7 |
6 | 浜中俊 | 西 | 3.26 | .182 | 11 |
7 | 北村宏司 | 東 | 3.26 | .188 | 45 |
8 | 福永祐一 | 西 | 3.20 | .202 | 5 |
9 | 武豊 | 西 | 3.19 | .088 | 8 |
10 | A.シュタルケ | 西 | 3.17 | .110 | 60 |
11 | 柴田大知 | 東 | 3.08 | .079 | 14 |
12 | 松山弘平 | 西 | 3.08 | .081 | 23 |
13 | 吉田隼人 | 東 | 3.06 | .112 | 16 |
14 | 和田竜二 | 西 | 3.01 | .089 | 9 |
15 | 横山典弘 | 東 | 3.01 | .130 | 19 |
16 | 藤岡康太 | 西 | 3.00 | .101 | 12 |
17 | 岩田康誠 | 西 | 2.97 | .086 | 10 |
18 | 松岡正海 | 東 | 2.97 | .047 | 34 |
19 | 三浦皇成 | 東 | 2.96 | .069 | 38 |
20 | 内田博幸 | 東 | 2.96 | .093 | 6 |
21 | 大野拓弥 | 東 | 2.93 | .110 | 20 |
22 | 勝浦正樹 | 東 | 2.92 | .051 | 30 |
23 | 柴田善臣 | 東 | 2.88 | .074 | 33 |
24 | 石橋脩 | 東 | 2.86 | .072 | 26 |
25 | 石川裕紀人 | 東 | 2.86 | .077 | 25 |
26 | 吉田豊 | 東 | 2.76 | .053 | 27 |
27 | 池添謙一 | 西 | 2.75 | .097 | 15 |
28 | 蛯名正義 | 東 | 2.70 | .060 | 13 |
29 | 柴山雄一 | 東 | 2.70 | .093 | 18 |
30 | 菱田裕二 | 西 | 2.69 | .067 | 28 |
31 | 津村明秀 | 東 | 2.68 | .064 | 36 |
32 | 鮫島克駿 | 西 | 2.57 | .077 | 39 |
33 | 中谷雄太 | 西 | 2.47 | .041 | 42 |
34 | 北村友一 | 西 | 2.42 | .078 | 22 |
35 | 松若風馬 | 西 | 2.39 | .049 | 21 |
採点平均:各レースごとの騎乗評価平均値の平均値。同数値は下3桁までみて順位決定。
やはりといいますか、昨年JRA騎手界の勢力図を一変させた、2人のJRA所属外国人ジョッキーが、1・2フィニッシュという結果になりました。
中でもC.ルメール騎手の評価が最も高く、2位のM.デムーロ騎手に0.8ポイントの差をつけて、唯一3.5点を超え、見事1位となりました。ルメール騎手は、クラブ馬の騎乗数でも2位となっており、結果として採点者、また採点票数も多いため、サンプル数も十分といえ、今年最も多くの一口馬主を満足させた騎手として、申し分のないデータといえるでしょう。点数を押し上げたのは、なんといってもクラブ馬勝率の高さといえ、.262はダントツのトップで、実に4回に1回はクラブ馬を勝利に導いていたという計算になります。なおこれはルメール騎手の今年の全騎乗における勝率.237を上回っています。
全国リーディングで100勝を超えた騎手は、ルメール騎手を含めて5人いましたが、その中のM.デムーロ騎手、川田将雅騎手、戸崎圭太騎手の3人は、少しリーディングとは順位が入れ替わりましたが、高いクラブ馬勝率を反映して、他の騎手の追随を許さず、当ランキングでも2~4位を占めました。一方で、福永祐一騎手は8位と、クラブ馬勝率の割には少しだけ評価を落とす形となりました。とはいえ、3.20は十分に高い評価です。
上位でリーディングよりも高い評価順位で目が付くのは、5~7位の田辺裕信騎手、浜中俊騎手、北村宏司騎手の3人です。特に田辺騎手は、クラブ馬勝率が上位陣の中ではやや低く、平均単勝人気もリーディング上位陣よりは明らかに低いのですが、入着にとどまったレースでも、出資者を納得させる騎乗をしていたことがデータからうかがえ、純粋に実力が評価されたと考えてもよいでしょう。浜中騎手と北村騎手は、怪我離脱が長かった影響により、リーディングは低めで、クラブ馬の騎乗数もやや少ないながらも、しっかりと勝率を残した点が評価に繋がったといえます。来年、年間を通した数値となった際にどうなるかも注目です。
クラブ馬での勝率が低いわりに評価が高い騎手としては、9位の武豊騎手にもいえ、勝率が1割を切りながらも、高い評価を得ているところは、さすが第一人者といえます。ただ、最近はキタサンブラックに代表されるように、個人馬主での活躍が目立ち、クラブ馬の騎乗数はかなり少ない傾向にあります。
全体的には西高東低の形となっており、関東の中堅、ベテラン勢はやや苦戦気味となりました。その中で、11位の柴田大知騎手は、ラフィアンの主戦という立場で、クラブ馬の騎乗数は全騎手の中でもダントツの1位を記録しながら、あまり他のクラブでは馴染みがないという独特の存在ですが、この順位に食い込んでいるのは、安定した騎乗ぶりをあらわしているといえるでしょう。
[優勝レース除外版]
一口馬主 2016年度 平均騎乗評価ランキング
さて、これで終えてもいいのですが、データを深く追及する当コラムとしては、ここでもう一つのランキングを提示したいと思います。先ほどが「表」のランキングなら、今度は「裏」のランキングといえるでしょうか。
先ほど触れたように、優勝した際の騎乗評価は、辛口な向きも一定あるとはいえ、やはり高くなりやすい傾向があります。以下に着順別の採点平均値を示します。
着順毎の採点平均は、1着が抜けて高く、また1着と2着の差が最も大きく、2着以降は着順による差が少なくなっていく傾向となっています。結果として、先ほどのランキングでは、単純に勝利数が多いほど、高い値が出やすいという傾向があります。出資者の総合的な満足度や、例外的な値を示す騎手を見つける上では大いに有用ですが、リーディングに現れない実力を探るという当初の目的を考えると、馬質の影響をまだ一定受けている点が少し物足りません。
そこで続いては、思い切って「優勝レースを除いた評価ランキング」も見ていきます。つまりは、すべて「負けたレース」の評価となります。これにより、騎手の技量ではどうにもならない馬質の差、例えば、新馬未勝利や下級条件戦によくある、抜けた実力馬に乗って楽勝するような、悪くいえば「誰が乗っても勝つんじゃないか」と思われるような優勝レースも除かれ、逆にそのようなレースを取りこぼすと、2着3着でも低い評価になりやすいため、より純粋な騎乗評価が反映されやすいランキングになるはずです。
「人間の真価は、困難と逆風の中でこそ測られる」(キング牧師)という言葉もありますが、敗れてしまったにも関わらず、一定の騎乗評価を受ける騎手は、騎手の腕でその順位を確保したと見られたということで、参考になるデータが導き出せそうです。
先ほど触れたように、優勝した際の騎乗評価は、辛口な向きも一定あるとはいえ、やはり高くなりやすい傾向があります。以下に着順別の採点平均値を示します。
着順毎の採点平均は、1着が抜けて高く、また1着と2着の差が最も大きく、2着以降は着順による差が少なくなっていく傾向となっています。結果として、先ほどのランキングでは、単純に勝利数が多いほど、高い値が出やすいという傾向があります。出資者の総合的な満足度や、例外的な値を示す騎手を見つける上では大いに有用ですが、リーディングに現れない実力を探るという当初の目的を考えると、馬質の影響をまだ一定受けている点が少し物足りません。
そこで続いては、思い切って「優勝レースを除いた評価ランキング」も見ていきます。つまりは、すべて「負けたレース」の評価となります。これにより、騎手の技量ではどうにもならない馬質の差、例えば、新馬未勝利や下級条件戦によくある、抜けた実力馬に乗って楽勝するような、悪くいえば「誰が乗っても勝つんじゃないか」と思われるような優勝レースも除かれ、逆にそのようなレースを取りこぼすと、2着3着でも低い評価になりやすいため、より純粋な騎乗評価が反映されやすいランキングになるはずです。
「人間の真価は、困難と逆風の中でこそ測られる」(キング牧師)という言葉もありますが、敗れてしまったにも関わらず、一定の騎乗評価を受ける騎手は、騎手の腕でその順位を確保したと見られたということで、参考になるデータが導き出せそうです。
それでは、優勝レースを除いた採点評価ランキングを見ていきましょう。 …
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採点のしくみ、全体的な採点傾向 / 全レースの採点平均値ランキング
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