2024-10-11現在データ
HOME > ノウハウ読み物 > 【2016年度】 騎手評価ランキング【一口データ研究室】
一口データ研究室
気になるテーマをデータで深く分析する、一口馬主ライフに役立つレポート集
-連載中-
レポートNo.013 |

一口馬主による騎手評価ランキング【2016年度】

騎手の活躍度合いを知る上では、競馬ファンにお馴染みの、勝利数による「騎手リーディング」の順位が大いに参考になります。好みの差はあれど、リーディング上位の騎手が、優れた腕前を持っていることに疑問はないでしょう。

しかし一方で、リーディングの順位が、必ずしも騎手の実力の序列とはいえないことも、競馬ファンには周知の事実です。

騎手が数多く勝利するためには、数多くのレースに乗ることと同時に、いかに有力な馬を集めるかという、馬の質量が非常に重要です。つまり、リーディングには、騎手の腕前以外にも、営業力や、契約するエージェントの実力も加味されているといえるでしょう。実力がほぼすべての、プロ野球選手の打率ランキングなどとは、この点において少し意味あいの違いがあります。

本稿では、このリーディングでは見えない部分を補完すべく、当サイトユーザーの皆様による、各レースの騎乗採点データの平均値を基に、独自の評価ランキングを作成して、リーディングとの比較などを分析していきたいと思います。

採点のしくみ、全体的な採点傾向

当サイト、あるいは「Myレース採点」機能にまだ馴染みがない方のために、この採点がどういうものなのか、また全体的な採点傾向を紹介しておきます。

当サイトには「Myレース採点」という機能があり、出資馬登録している馬に限り、レース毎に「総合評価」「臨戦過程」「騎乗」「馬の頑張り」の4つの項目について、レース結果画面から、5段階で評価できる仕組みがあります。今回はこの中で、「騎乗」評価を用いて、データの分析を行います。

一口馬主は、出資馬の実力、強み弱み、得意脚質、仕上がり具合などを詳しく把握した上で、レースでは騎手と出資馬の一挙一動を、スタートからゴールまでジッと注視しながら観戦します。一般人とはいえ、競馬歴は総じて長く、複数人による民主的な評価でもあり、特定騎手の騎乗を評価する上で、まさに適任と言えるでしょう


Myレース採点における、騎乗評価の全体的な点数分布は以下のようになっています。
中間の3点が最多で、以下最高最低に近づくほど少なくなるという、正規分布的な傾向を示しており、統計母集団として偏りが少なく、有意なデータであるといえます。平均評価も3.1と、ほぼ中央の値となっています。

1番人気馬を中心に見る馬券ファンとは異なり、出走馬のオーナー側の視点で見ると、細かくクラス分けされ、同じような実力を持つ20頭近くが参加するレースにおいて、自分の出資馬が、他の全馬を負かして勝利するということが、いかに難しいことかを痛感します。それを日々身をもって体感している一口馬主の皆さんですから、もちろん勝利時の採点は最も高い傾向を示しますが、たとえ負けてしまったレースでも、騎乗については客観的に評価して、高い採点がされる場合もあります。

例えば2着に敗れてしまった場合でも、約20%もの人が5点、約40%が4点と、半数以上の割合で高い採点がされています。逆に、勝利した場合でも、もちろん5点が約60%と最多ですが、残りの約40%は、星を落とした評価をしています。勝利を喜びながらも、騎乗についてはきちんとシビアな目で見ている場合もあるということで、おおむね皆さん客観的で冷静な評価をして頂いていることがうかがえます。


それでは、いよいよ集計結果を見ていきましょう。本稿では2つの切り口でランキングを作成して分析します。

全レースの採点平均値ランキング

まずは、全レースの採点平均値によるランキングです。このランキングでは、各騎手が、今年どれだけ一口馬主を納得させてくれる騎乗をしたかが、端的に分かるはずです。なお、レース数、頭数、採点者数などで、一定の数値を満たさない騎手は除かせて頂いた結果、今回は35人の騎手が対象となりました。


2016年度 Myレース採点 平均騎乗評価ランキング
採点
順位
騎手名 所属 採点平均 クラブ馬
勝率
全国リーデ
ィング順位
1C.ルメール西3.54.2622
2M.デムーロ西3.46.2104
3川田将雅西3.40.1993
4戸崎圭太3.33.2081
5田辺裕信3.26.1117
6浜中俊西3.26.18211
7北村宏司3.26.18845
8福永祐一西3.20.2025
9武豊西3.19.0888
10A.シュタルケ西3.17.11060
11柴田大知3.08.07914
12松山弘平西3.08.08123
13吉田隼人3.06.11216
14和田竜二西3.01.0899
15横山典弘3.01.13019
16藤岡康太西3.00.10112
17岩田康誠西2.97.08610
18松岡正海2.97.04734
19三浦皇成2.96.06938
20内田博幸2.96.0936
21大野拓弥2.93.11020
22勝浦正樹2.92.05130
23柴田善臣2.88.07433
24石橋脩2.86.07226
25石川裕紀人2.86.07725
26吉田豊2.76.05327
27池添謙一西2.75.09715
28蛯名正義2.70.06013
29柴山雄一2.70.09318
30菱田裕二西2.69.06728
31津村明秀2.68.06436
32鮫島克駿西2.57.07739
33中谷雄太西2.47.04142
34北村友一西2.42.07822
35松若風馬西2.39.04921
採点平均:各レースごとの騎乗評価平均値の平均値。同数値は下3桁までみて順位決定。


やはりといいますか、昨年JRA騎手界の勢力図を一変させた、2人のJRA所属外国人ジョッキーが、1・2フィニッシュという結果になりました。

中でもC.ルメール騎手の評価が最も高く、2位のM.デムーロ騎手に0.8ポイントの差をつけて、唯一3.5点を超え、見事1位となりました。ルメール騎手は、クラブ馬の騎乗数でも2位となっており、結果として採点者、また採点票数も多いため、サンプル数も十分といえ、今年最も多くの一口馬主を満足させた騎手として、申し分のないデータといえるでしょう。点数を押し上げたのは、なんといってもクラブ馬勝率の高さといえ、.262はダントツのトップで、実に4回に1回はクラブ馬を勝利に導いていたという計算になります。なおこれはルメール騎手の今年の全騎乗における勝率.237を上回っています。

全国リーディングで100勝を超えた騎手は、ルメール騎手を含めて5人いましたが、その中のM.デムーロ騎手川田将雅騎手戸崎圭太騎手の3人は、少しリーディングとは順位が入れ替わりましたが、高いクラブ馬勝率を反映して、他の騎手の追随を許さず、当ランキングでも2~4位を占めました。一方で、福永祐一騎手は8位と、クラブ馬勝率の割には少しだけ評価を落とす形となりました。とはいえ、3.20は十分に高い評価です。

上位でリーディングよりも高い評価順位で目が付くのは、5~7位の田辺裕信騎手、浜中俊騎手、北村宏司騎手の3人です。特に田辺騎手は、クラブ馬勝率が上位陣の中ではやや低く、平均単勝人気もリーディング上位陣よりは明らかに低いのですが、入着にとどまったレースでも、出資者を納得させる騎乗をしていたことがデータからうかがえ、純粋に実力が評価されたと考えてもよいでしょう。浜中騎手と北村騎手は、怪我離脱が長かった影響により、リーディングは低めで、クラブ馬の騎乗数もやや少ないながらも、しっかりと勝率を残した点が評価に繋がったといえます。来年、年間を通した数値となった際にどうなるかも注目です。

クラブ馬での勝率が低いわりに評価が高い騎手としては、9位の武豊騎手にもいえ、勝率が1割を切りながらも、高い評価を得ているところは、さすが第一人者といえます。ただ、最近はキタサンブラックに代表されるように、個人馬主での活躍が目立ち、クラブ馬の騎乗数はかなり少ない傾向にあります。

全体的には西高東低の形となっており、関東の中堅、ベテラン勢はやや苦戦気味となりました。その中で、11位の柴田大知騎手は、ラフィアンの主戦という立場で、クラブ馬の騎乗数は全騎手の中でもダントツの1位を記録しながら、あまり他のクラブでは馴染みがないという独特の存在ですが、この順位に食い込んでいるのは、安定した騎乗ぶりをあらわしているといえるでしょう。

[優勝レース除外版]
一口馬主 2016年度 平均騎乗評価ランキング

さて、これで終えてもいいのですが、データを深く追及する当コラムとしては、ここでもう一つのランキングを提示したいと思います。先ほどが「表」のランキングなら、今度は「裏」のランキングといえるでしょうか。

先ほど触れたように、優勝した際の騎乗評価は、辛口な向きも一定あるとはいえ、やはり高くなりやすい傾向があります。以下に着順別の採点平均値を示します。

着順毎の採点平均は、1着が抜けて高く、また1着と2着の差が最も大きく、2着以降は着順による差が少なくなっていく傾向となっています。結果として、先ほどのランキングでは、単純に勝利数が多いほど、高い値が出やすいという傾向があります。出資者の総合的な満足度や、例外的な値を示す騎手を見つける上では大いに有用ですが、リーディングに現れない実力を探るという当初の目的を考えると、馬質の影響をまだ一定受けている点が少し物足りません。


そこで続いては、思い切って「優勝レースを除いた評価ランキング」も見ていきます。つまりは、すべて「負けたレース」の評価となります。これにより、騎手の技量ではどうにもならない馬質の差、例えば、新馬未勝利や下級条件戦によくある、抜けた実力馬に乗って楽勝するような、悪くいえば「誰が乗っても勝つんじゃないか」と思われるような優勝レースも除かれ、逆にそのようなレースを取りこぼすと、2着3着でも低い評価になりやすいため、より純粋な騎乗評価が反映されやすいランキングになるはずです。

「人間の真価は、困難と逆風の中でこそ測られる」(キング牧師)という言葉もありますが、敗れてしまったにも関わらず、一定の騎乗評価を受ける騎手は、騎手の腕でその順位を確保したと見られたということで、参考になるデータが導き出せそうです。

それでは、優勝レースを除いた採点評価ランキングを見ていきましょう。 …
本レポートは、プレミアム会員登録でご覧いただけます。
全文5769文字 (現在4307文字まで表示)
採点のしくみ、全体的な採点傾向 / 全レースの採点平均値ランキング

プレミアム会員ご案内
すでにプレミアム会員の方は ログイン してご覧ください
一口データ研究室
2024年クラシック世代「クラブ3冠」ランキング 【2024年版】2歳新種牡馬:8月時点の通信簿 ダートでつぶしが効く種牡馬、効かない種牡馬 大物が出やすい募集価格に変化の兆し? 牝馬(の方)が得意な厩舎7選 母と同じ厩舎に預託される馬の活躍可能性 「左後一白の馬は走る」は本当? ダート3冠への出走条件から考える「今後のダート馬出資戦略」 未勝利続戦馬の「解放元年」 【2023年度】 年間騎手評価ランキング 春クラシック切符をつかむための「勝ち上がり期限」 [更新]新馬戦勝ち負け基準タイム2023 2023年クラシック世代「クラブ3冠」ランキング 2歳新種牡馬:初年度8月終了時点の通信簿 ブレイク直前!若手調教師名鑑2023 「空胎明けの仔は走る」は本当? 2023年に覚えておきたい「次世代ニックス」10選 「未勝利善戦マン」が出世する可能性は? ブラックタイプで確認すべき「近親活躍馬」の優先順位 「早生まれ」のクラシック活躍可能性【2023年度版】 2023年度のJRA賞金・ルール変更を読み解く 【2022年度】 年間騎手評価ランキング 中央から地方に移籍してどこまで稼げる? [更新]新馬戦勝ち負け基準タイム2022 2022年クラシック世代「クラブ3冠」ランキング 2022年クラブ別出資攻略ガイド 【vol.4】 2022年クラブ別出資攻略ガイド 【vol.3】 2022年クラブ別出資攻略ガイド 【vol.2】 2022年クラブ別出資攻略ガイド 【vol.1】 サンデーサイレンスのクロス効果はどこまで本物? クラブ馬の「3勝クラスの壁」について考える 出資馬が「障害入り」したときに知っておくべきポイント 2022年度のJRA賞金・ルール変更を読み解く 【2021年度】 年間騎手評価ランキング 馬名応募のクラブ別傾向と対策 2021 [更新]新馬戦勝ち負け基準タイム2021 2021年クラシック世代「クラブ3冠」ランキング 「初仔」出資時に注意すべきポイントと狙い目 ポスト・ディープインパクト時代の出資戦略 厩舎の「距離適性」はどこまで重要か 「馬が買えない時代」のクラブ掛け持ち戦略【後編】 「馬が買えない時代」のクラブ掛け持ち戦略【前編】 「3アウト」から復活する馬の可能性 去勢は本当に効果があるのか検証する 「3歳3月新馬戦廃止」の影響を考える 【2020年度】 年間騎手評価ランキング 未勝利のまま中央で続戦する馬の可能性 [更新] 新馬戦の追い切り傾向の変化 2020年クラシック世代「クラブ3冠」ランキング 輸入繁殖産駒、国別の成績傾向と対策 輸入繁殖産駒の躍進と国別ランキング 募集価格1000万円台馬の活躍可能性を考える 母父サンデーサイレンス系の攻略辞典 母父キングカメハメハVS母父ディープインパクト クラブ馬の「東西格差」はどこまである? ダートの大物を引き当てる難易度と出資時ポイント 「京都競馬場長期休止」で笑う種牡馬、泣く種牡馬 【2019年度】 年間騎手評価ランキング 馬券回収率の高いクラブ、低いクラブは? [更新] 新馬戦の追い切り傾向の変化 親の健康から産駒の健康を予測する クラブ馬でクラシックを狙うための傾向と対策 出資馬が毎週出走するには、何頭必要? 短距離系種牡馬はお買い得? 新規開業調教師への出資時ポイント 「超高額馬」のコストパフォーマンス 調教師定年転厩の影響&再生が得意な厩舎 転厩の効果とクラブ別転厩傾向 JRAの賞金手当は今後も増える? 【2018年度】 騎手評価ランキング 好不調の波が大きいクラブ、安定したクラブ [更新] 新馬戦の追い切り傾向の変化 クラブ馬の募集価格の推移と傾向 入厩前の手術による影響は? 「お買い得」な種牡馬の世代は? 新種牡馬の検討において注意すべき世代 新種牡馬は2年目産駒が狙い目? 種牡馬の年齢と産駒の成績の関係 未勝利戦デビューする馬の可能性 外国産馬の出資における傾向と対策 外国産馬の歴史と現在 【2017年度】 騎手評価ランキング [更新] 新馬戦の追い切り傾向の変化 地方転出→中央復帰馬が活躍する条件 重賞馬の下、全兄弟と半兄弟の違いは? 兄、姉が重賞馬のコストパフォーマンス 管囲が細いと故障も増える? 意外と知らない?「測尺」の基本 募集時の人気と成績の関係 エリート条件馬の選びかた 条件馬のままで、どこまで稼げる? 牡馬vs牝馬 コストパフォーマンス比較 【2016年度】 騎手評価ランキング 【クラブ別】馬名応募の傾向と対策 新馬戦で勝ち負けできる基準調教タイム 母の競走成績と繁殖成績の関係 新馬戦の結果で将来はどこまで決まる? 早期入厩・早期デビューは良いこと? 馬体重と適性、デビュー時期、故障の関係 馬体重(馬格)と成績との関係 インブリード vs アウトブリード 芝馬とダート馬のコストパフォーマンス 父と同じ毛色の仔は走る? 母の年齢考察 ~母高齢や初仔は? 早生まれ、遅生まれは良い?悪い?
(連載中)
著者
一口馬主DB 編集部