2021-06-12現在データ
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一口データ研究室
気になるテーマをデータで深く分析する、一口馬主ライフに役立つレポート集
-連載中-
レポートNo.032 |

入厩前の手術による影響は?

今回は、読者の方からのリクエストに基づきまして、「入厩前の手術」がその馬の将来に与える影響について、データで考察してみたいと思います。

「手術」と聞くと、現役馬においてもなかなかショッキングな出来事ですが、それが入厩前の時点で発生するともなるとなおさらです。

もちろん、多くの馬が経験するものではありませんが、入厩前ということは、まだ募集期間中である可能性もありますので、出資時の検討において、また、既に出資済の馬が手術となった場合においても、一つの参考情報が得られるのではないかと思います。

入厩前手術の内訳

基礎データとしては、以前「第19回 管囲が細いと故障も増える?」で調査したデータが、今回の分析でも応用できるものでしたので、これを用います。サンプルは5世代、クラスや性別などの属性が偏らないよう実際の比率に沿う形で、計約500頭です。

その中から、入厩前に手術を行った馬を調査対象としました。デビュー前としてもよかったのですが、入厩後は課せされる調教の負荷が大きくなり、結果として症状も現役馬と同じレベルになりやすいため、今回はテーマの狙いから、入厩前に限定させて頂きました。


さて、一口に「手術」とはいっても、ご存じの通り、競走馬にはさまざまな症例があり、その影響も千差万別ですが、入厩前に限ると実例はごく少なく、今回のサンプルでは、約3%となりました。割合的にはレアケースと言ってよいでしょう。

手術内容の内訳としては、以下のようになりました。




募集時期に見聞きすることが多い「OCD」がやはり多く、今回のサンプルでは、部位はすべて後脚の飛節でした。その他は剥離骨折など、主には前脚の骨に起因する問題が多いのですが、馬によって症状がまちまちであるため、今回は「OCD」と「その他」という括りに分類し、分析を進めさせて頂きます。

ノド鳴りなども分析できればとは思っていたのですが、ノドの手術は入厩してから、強い追い切りやレースを経てから決断することが多いため、入厩前という区切りで見ると、今回の調査では該当馬はいませんでした。こちらはまた機会があれば、別途調査してみたいと思います。

OCDの基礎知識

さて、自然とOCD手術を受けた馬が分析の中心となりますが、この後出てくる各種データの理解を深めやすくするために、ここでOCDについて、あらためて症状と治療内容を確認しておきましょう。

当サイト「馬体の見かた講座」の 第41回 下村優樹獣医師インタビュー [OCDと骨瘤] において、社台ファームの下村獣医師が詳しく解説してくださっていますので、詳しくは上記リンク先をご覧頂くとして、以下では、同回から要点を引用させて頂きます。

下村獣医師
「OCD(離断性骨軟骨症)は、肉体の成長が速いサラブレッドには珍しくない疾患であり、発育していく過程で、軟骨の骨化が阻害されることによって発生します。
(中略)
一旦馬を休ませて安静にさせると症状が引く馬もいますが、また運動を開始したり少し負荷が掛かると再発する馬もいるので、外科的に離断骨軟骨片を摘出し、軟骨下骨の搔爬術(表面の軟組織をかきとること)を施す場合もありますね。
(中略)
離断骨軟骨片を削り取って除去する手術と聞けば、一般の競馬ファンにしてみれば大がかりに思えますが、予後は決して悪くありません。早い段階で発見をして処置をすれば、競走能力には問題がありません。」



OCDは邪魔な軟骨を取り出す手術であり、軽度のものであっても、再発予防のために手術を行う場合があり、予後はおおむね良好で競走能力には影響がない、といったところでしょうか。少なくとも、早期に発見して処置できていれば、将来についてはあまり心配する必要はない、というのが定説のようです。

手術がデビュー時期に与える影響

一方、能力への影響とともに、一口馬主の視点でまず気になるのはおそらく、「手術により調教が遅れ、デビューがかなり遅くなるのでは?」という不安ではないかと思われます。大きなものではないとはいえ、手術を行う以上、放牧や調教ができない、一定の安静期間は必ず発生するため、同期の馬たちに比べて、進捗が一歩遅れることは否めません。


そこで以下では、入厩前に手術を行った馬と、そうではない馬の、平均デビュー時期を比較したデータを算出しました。 …
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入厩前手術の内訳 / 手術がデビュー時期に与える影響 / 競走成績への影響

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著者
一口馬主DB 編集部