レポートNo.018 |
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意外と知らない?「測尺」の基本
今回は、「測尺」についてのお話です。
一口馬主ライフを開始すると、一般競馬ファン時代にはほとんど見聞きすることもなかった「謎の用語」がいくつか登場しますが、「測尺」はその代表的なもののひとつと言えるかもしれません。
多くのクラブではまず募集時に公表されますが、特に初心者の方は測尺値をそもそもどう見ればいいのか、とまどう場合もあるのではないでしょうか。また、初心者ではなくとも、あまり詳しく学習する機会もないまま、なんとなく自己流の見かたで、あるいは、同時に発表される馬体重以外はあまり積極的には参考にしないという方も意外と多いのではないでしょうか。
本レポートでは、測尺の基本的なところからおさらいしながら、統計データも交えてその傾向や成長性、見る上での注意点などを俯瞰していきたいと思います。ベテランの方であればいまさら感もあるかもしれませんが、意外と新たな発見があるかもしれません。
一口馬主ライフを開始すると、一般競馬ファン時代にはほとんど見聞きすることもなかった「謎の用語」がいくつか登場しますが、「測尺」はその代表的なもののひとつと言えるかもしれません。
多くのクラブではまず募集時に公表されますが、特に初心者の方は測尺値をそもそもどう見ればいいのか、とまどう場合もあるのではないでしょうか。また、初心者ではなくとも、あまり詳しく学習する機会もないまま、なんとなく自己流の見かたで、あるいは、同時に発表される馬体重以外はあまり積極的には参考にしないという方も意外と多いのではないでしょうか。
本レポートでは、測尺の基本的なところからおさらいしながら、統計データも交えてその傾向や成長性、見る上での注意点などを俯瞰していきたいと思います。ベテランの方であればいまさら感もあるかもしれませんが、意外と新たな発見があるかもしれません。
測尺とは?
まずはおさらいもかねて基本的な事項からです。競走馬の測尺とは、いわゆる「体高」「胸囲」「管囲(かんい)」を人手により計測するもので、それぞれセンチメートル小数点第一位、つまりミリ単位まで記録することが一般的です。計測時期は主には育成時代で、馬体の成長度合いの目安として生産・育成者が利用したり、販売の際に馬体サイズ感の参考として購買希望者に開示されるといった用途があります。また、体重計がある環境では、同時に馬体重も測定・記録するケースがほとんどです。
一口馬主向けには、多くのクラブでは募集開始時にまず全馬一斉に公表され、その後はクラブにもよりますが、入厩までの間に数回レポートされる場合もあります。一方で、入厩後に計測、公表するケースはほとんどありません。
それぞれの計測部位はおよそ以下の図の通りです。
測尺部位は、馬体の前方に集中していることが分かります。 上記は馬体表面から見た図ですが、計測している部位の「中身」がどうなっているかも見ておきましょう。構造を知ることは、計測値の意味を知る上で参考になるはずです。まずは体高、胸囲部分です。
馬を真っ直ぐに立たせて、キ甲の頂点から地面までを垂直に計測するのが体高です。肩甲骨のさらに上、体高の頂点であるキ甲部は、主には胸椎の突起、つまり骨により構成されています。胴体部分では通常最も高い部分であり、また「キ甲が抜ける」という表現もあるように、成長に伴い上方に突き出てくる部分ですので、人間の身長に近い位置づけです。
一方の胸囲はキ甲付近から胸部分の周囲を測るものであり、このあたりは帯径(おびみち)といい、鞍を固定するための腹帯が通る部分でもあります。皮膚の下には多少の筋肉はありますが、トレーニングにより大きく発達する類の筋肉ではなく、主には肋骨の骨格をなぞる形で、そしてその中には肺が収まっています。生後しばらくは体高の方が胸囲より大きいのですが、成長に伴い逆転し、1歳夏の募集時点においては、ほぼ例外なく胸囲の方が大きくなります。
なんだか馬体の見かた講座のような雰囲気になってきましたが、続いては管囲です。脚部には内臓がないため、こちらには筋肉や腱も表示しています。
左前脚の膝から下、足首までの管と呼ばれる部分の中央付近を計測します。画像内上部の赤っぽい色の部分は筋肉ですが、見ての通り、馬の膝から下には、筋肉はほとんどありません。結果として、管の部分は、主には骨と靭帯、腱で構成されています。骨折でおなじみの第三中手骨、屈腱炎でおなじみの浅指屈筋腱(浅屈腱)など、一口馬主があまり聞きたくない故障が発生する部位もこのあたりに収まっています。
3つの測尺部位に共通しているのは、競走能力に直結しそうな筋肉が発達する、クビ、胸前、肩、上腕、トモ付近などは含まれていないことです。つまり、測尺は筋肉量を測るものではなく、主には骨格のサイズを計測するためのものと覚えておくと良いでしょう。
一口馬主向けには、多くのクラブでは募集開始時にまず全馬一斉に公表され、その後はクラブにもよりますが、入厩までの間に数回レポートされる場合もあります。一方で、入厩後に計測、公表するケースはほとんどありません。
それぞれの計測部位はおよそ以下の図の通りです。
測尺部位は、馬体の前方に集中していることが分かります。 上記は馬体表面から見た図ですが、計測している部位の「中身」がどうなっているかも見ておきましょう。構造を知ることは、計測値の意味を知る上で参考になるはずです。まずは体高、胸囲部分です。
馬を真っ直ぐに立たせて、キ甲の頂点から地面までを垂直に計測するのが体高です。肩甲骨のさらに上、体高の頂点であるキ甲部は、主には胸椎の突起、つまり骨により構成されています。胴体部分では通常最も高い部分であり、また「キ甲が抜ける」という表現もあるように、成長に伴い上方に突き出てくる部分ですので、人間の身長に近い位置づけです。
一方の胸囲はキ甲付近から胸部分の周囲を測るものであり、このあたりは帯径(おびみち)といい、鞍を固定するための腹帯が通る部分でもあります。皮膚の下には多少の筋肉はありますが、トレーニングにより大きく発達する類の筋肉ではなく、主には肋骨の骨格をなぞる形で、そしてその中には肺が収まっています。生後しばらくは体高の方が胸囲より大きいのですが、成長に伴い逆転し、1歳夏の募集時点においては、ほぼ例外なく胸囲の方が大きくなります。
なんだか馬体の見かた講座のような雰囲気になってきましたが、続いては管囲です。脚部には内臓がないため、こちらには筋肉や腱も表示しています。
左前脚の膝から下、足首までの管と呼ばれる部分の中央付近を計測します。画像内上部の赤っぽい色の部分は筋肉ですが、見ての通り、馬の膝から下には、筋肉はほとんどありません。結果として、管の部分は、主には骨と靭帯、腱で構成されています。骨折でおなじみの第三中手骨、屈腱炎でおなじみの浅指屈筋腱(浅屈腱)など、一口馬主があまり聞きたくない故障が発生する部位もこのあたりに収まっています。
3つの測尺部位に共通しているのは、競走能力に直結しそうな筋肉が発達する、クビ、胸前、肩、上腕、トモ付近などは含まれていないことです。つまり、測尺は筋肉量を測るものではなく、主には骨格のサイズを計測するためのものと覚えておくと良いでしょう。
各部位の標準的な値
個々の馬の数字を眺めていても、牡馬と牝馬の性別差もありますし、例えばその馬の体高が標準に比べて大きいのか小さいのか、ということは経験を積まないとなかなか直感的には分かりません。参考データとして、以下では、各部位ごとの頭数分布をまとめました。サンプルに用いたのは2010~2014年産馬、約1700頭の1歳夏(6月~8月頃)における募集開始時点での測尺値です。以下、本レポートで提示するデータはすべて、このサンプルを用いた統計となります。
体高は、平均値が153.0cm、中央値が152.5cmでこのあたりが標準的サイズです。分布も150cm以上155cm未満が圧倒的に多く、また95%の馬は145cm~155cmの間に収まっています。変動係数というばらつき具合を示す数値も3つの測尺値の中では最も低く、つまりは個体差がつきにくい部位と言えます。
胸囲は、平均値が171.0cm、中央値が170.5cmでこのあたりが標準的サイズです。分布は165cm以上170cm未満、および170cm以上175cm未満が2トップで全体の2/3を占めています。体高よりは多少個体差が生じやすくなりますが、全体的にはこちらもまとまっているデータ群といえます。
管囲は、平均値が20.0cm、中央値が19.8cmでこのあたりが標準的サイズです。分布は19.0cm以上から20.5cm未満までで全体の70%を占めます。こちらも統計としては比較的まとまってはいますが、3つの測尺値の中では個体によりばらつきが生じやすい部位となっています。
馬体重も見ておきましょう。馬体重は、平均値が408kg、中央値が406kgでこのあたりが標準的サイズです。グラフを見ても分かるように、3つの測尺値と比較すると、ばらつきおよび個体差は大きく、生まれ月の影響も大きくなります。
体高は、平均値が153.0cm、中央値が152.5cmでこのあたりが標準的サイズです。分布も150cm以上155cm未満が圧倒的に多く、また95%の馬は145cm~155cmの間に収まっています。変動係数というばらつき具合を示す数値も3つの測尺値の中では最も低く、つまりは個体差がつきにくい部位と言えます。
胸囲は、平均値が171.0cm、中央値が170.5cmでこのあたりが標準的サイズです。分布は165cm以上170cm未満、および170cm以上175cm未満が2トップで全体の2/3を占めています。体高よりは多少個体差が生じやすくなりますが、全体的にはこちらもまとまっているデータ群といえます。
管囲は、平均値が20.0cm、中央値が19.8cmでこのあたりが標準的サイズです。分布は19.0cm以上から20.5cm未満までで全体の70%を占めます。こちらも統計としては比較的まとまってはいますが、3つの測尺値の中では個体によりばらつきが生じやすい部位となっています。
馬体重も見ておきましょう。馬体重は、平均値が408kg、中央値が406kgでこのあたりが標準的サイズです。グラフを見ても分かるように、3つの測尺値と比較すると、ばらつきおよび個体差は大きく、生まれ月の影響も大きくなります。
生まれ月による影響
募集馬の馬体数値を見る上で少し注意を要するのは、生まれ月および成長要素です。
たとえば、募集からデビューまでの間に、成長に伴って馬体重がどんどん増えていくことは、よく知られているかと思います。当サイトでも、統計分析を活用したツール「馬体重成長シミュレーション」を提供しています。
成長に伴って馬体重が増えるということは、募集時点においては、早生まれの馬ほど重く、遅生まれの馬ほど軽い傾向があり、つまりは単純に募集時点の馬体重を他馬と比較して重い軽いを論じても、成長の早さは予測できるかもしれませんが、最終的なデビュー段階での馬体重までは分かりません。早生まれと遅生まれとでは、人間で例えれば、小学校の1学年から2学年ぐらいの違いがあると言えば分かりやすいでしょうか。
すなわち、馬体重は必ず、生まれ月を考慮しながら見るべきであり、また計測日や性別等によっても成長度合いは変わってくるため、デビュー時にどのくらいの馬体重になるかを、ある程度正確に予測するには、相応の経験値か、あるいは同ツールのように統計学の力を借りる必要があります。
たとえば、募集からデビューまでの間に、成長に伴って馬体重がどんどん増えていくことは、よく知られているかと思います。当サイトでも、統計分析を活用したツール「馬体重成長シミュレーション」を提供しています。
成長に伴って馬体重が増えるということは、募集時点においては、早生まれの馬ほど重く、遅生まれの馬ほど軽い傾向があり、つまりは単純に募集時点の馬体重を他馬と比較して重い軽いを論じても、成長の早さは予測できるかもしれませんが、最終的なデビュー段階での馬体重までは分かりません。早生まれと遅生まれとでは、人間で例えれば、小学校の1学年から2学年ぐらいの違いがあると言えば分かりやすいでしょうか。
すなわち、馬体重は必ず、生まれ月を考慮しながら見るべきであり、また計測日や性別等によっても成長度合いは変わってくるため、デビュー時にどのくらいの馬体重になるかを、ある程度正確に予測するには、相応の経験値か、あるいは同ツールのように統計学の力を借りる必要があります。
それでは、「体高」「胸囲」「管囲」においてはどうでしょうか。 …
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全文5926文字 (現在2913文字まで表示)
各部位の標準的な値 / 生まれ月による影響 / 管囲の「誤差」 / 馬体重との相関
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