
数々の名馬を担当した調教助手に聞く「気性難」の正体
蛯名正義厩舎・渡部調教助手インタビュー【前編】
競馬の世界には、あいまいな言葉が溢れています。あいまいな言葉シリーズ第4弾として、「気性難」を取り上げます。
「この馬は気性難なので…」とネガティブな意味として使われるワードですが、そもそもサラブレッドの気性について、僕たちは多くの表現を持ちます。たとえば、気性が難しい、気性が良い、気性が激しい、などなど。馬が十頭いれば十通りの気性があるように、それぞれの気性を表す言葉も様々であり、どれもわかるようで、あいまいさもあります。
ここは現場のプロに聞いてみたいと思い、今回サラブレッドの気性についてインタビューさせてもらったのは、美浦・蛯名正義厩舎所属の渡部貴文調教助手です。
渡部さんはかつて藤沢和雄厩舎に所属し、グランアレグリアやソウルスターリング、ペルーサ、ルルーシュなどの名馬を担当しました。現在は蛯名正義厩舎に所属しながら、一般社団法人Happy Horse Creatorsの代表も務め、馬事文化の普及活動もされています。
気性が難しい馬がよく回ってくるという渡部さんは、今回のテーマにぴったりです。この前編では担当した名馬のエピソードも交えながら、気性難の定義やタイプを整理し、後編では気性難の解消方法、また一口馬主に向けて、出資時に注目すべきポイントなどもお聞きしたいと思います。
「この馬は気性難なので…」とネガティブな意味として使われるワードですが、そもそもサラブレッドの気性について、僕たちは多くの表現を持ちます。たとえば、気性が難しい、気性が良い、気性が激しい、などなど。馬が十頭いれば十通りの気性があるように、それぞれの気性を表す言葉も様々であり、どれもわかるようで、あいまいさもあります。
ここは現場のプロに聞いてみたいと思い、今回サラブレッドの気性についてインタビューさせてもらったのは、美浦・蛯名正義厩舎所属の渡部貴文調教助手です。
渡部さんはかつて藤沢和雄厩舎に所属し、グランアレグリアやソウルスターリング、ペルーサ、ルルーシュなどの名馬を担当しました。現在は蛯名正義厩舎に所属しながら、一般社団法人Happy Horse Creatorsの代表も務め、馬事文化の普及活動もされています。

渡部貴文(わたなべ たかふみ)さん プロフィール
千葉県出身。2006年よりJRAの厩務員及び調教助手。藤沢和雄厩舎ではグランアレグリア、ソウルスターリング、ペルーサ、ルルーシュといった数々の名馬を担当。現在は美浦・蛯名正義厩舎所属。トレセン外でも「楽しく、正しい」をテーマに馬事振興活動を精力的に行っている。
一般社団法人 Happy Horse Creators 代表理事
馬事振興YouTube『おさむとなべ Next Challenge!!』運営
──はじめまして。今回はサラブレッドの気性という、非常にあいまいで難解なテーマのインタビューに応じてくださってありがとうございます。
渡部さんが運営されているYouTubeチャンネル『おさむとなべ Next Challenge!!』を視聴させてもらったり、継続的に展開されている講演や勉強会などを知るにつれ、素晴らしい活動をされているなと思いました。現役の調教助手さんがこのような形で発信をされていることは珍しいですね。どのようなきっかけで活動を始められたのでしょうか?
渡部貴文調教助手(以下、敬称略) もともとはYouTubeチャンネルをおさむさんという方と一緒にやっていましたが、彼の急逝にともない、私が主体となって活動することになりました。それをきっかけに、視聴者さんにも手伝ってもらいながら、馬事振興の方向に大きく舵を切りました。
── 先日、藤沢和雄元調教師や角居勝彦元調教師も登壇された講演の中で、渡部さんが競馬業界における人材不足の話をされていて、僕もそのとおりだと感じました。人材不足を解消するために、馬の魅力を、馬を知らない人たちにも伝えていく草の根的な活動はとても重要ですね。
渡部 人材が不足すると、全体のレベルが下がるはずです。せっかく今、日本の競馬は人も馬も世界と戦えるレベルまで来たのに、もったいないと思います。どれだけ施設が立派になっても、引退競走馬を大切にしようと思っても、それを扱うのは結局は人なのですから。人がそろっていなければ何も始まらないですからね。
渡部さんが運営されているYouTubeチャンネル『おさむとなべ Next Challenge!!』を視聴させてもらったり、継続的に展開されている講演や勉強会などを知るにつれ、素晴らしい活動をされているなと思いました。現役の調教助手さんがこのような形で発信をされていることは珍しいですね。どのようなきっかけで活動を始められたのでしょうか?
渡部貴文調教助手(以下、敬称略) もともとはYouTubeチャンネルをおさむさんという方と一緒にやっていましたが、彼の急逝にともない、私が主体となって活動することになりました。それをきっかけに、視聴者さんにも手伝ってもらいながら、馬事振興の方向に大きく舵を切りました。
── 先日、藤沢和雄元調教師や角居勝彦元調教師も登壇された講演の中で、渡部さんが競馬業界における人材不足の話をされていて、僕もそのとおりだと感じました。人材不足を解消するために、馬の魅力を、馬を知らない人たちにも伝えていく草の根的な活動はとても重要ですね。
渡部 人材が不足すると、全体のレベルが下がるはずです。せっかく今、日本の競馬は人も馬も世界と戦えるレベルまで来たのに、もったいないと思います。どれだけ施設が立派になっても、引退競走馬を大切にしようと思っても、それを扱うのは結局は人なのですから。人がそろっていなければ何も始まらないですからね。
グランアレグリアの成長過程と名伯楽の教え
──
今回のテーマはサラブレッドの気性ですが、渡部さんが過去に担当された馬たちを挙げて具体的に教えていただけると、読者の方々にとっては面白いと思います。 …