2023年ウインレーシングクラブ募集馬インタビュー
推奨馬紹介&新種牡馬ウインブライト産駒の特徴も
昨年に引き続き、ウインレーシングクラブ代表の岡田義広さんにインタビューさせていただきます。今年度の募集馬から厳選された馬たちを紹介していただくのはもちろん、クラブの出身馬であり新種牡馬でもあるウインブライトについて、さらには配合の狙いや馬づくりに対する想いまで、今年も存分に語っていただきました。
※以下、当日の取材順に掲載を行っており、各馬の並びは推奨の順位を示すものではございません。
※カタログ写真以外の各馬写真、インタビュー内容は2023年7月下旬時点。
【1】ウインオリアートの22(牡・募集番号 2)
今年度も5頭の推奨馬を挙げてくださっています。まずは1頭目のウインオリアートの22から。馬体をパッと見て、とてもバランスの取れた好馬体という印象を受けました。
(株)ウイン代表 岡田義広氏(以下、敬称略) そうですね。募集写真からは馬体の大きさが伝わりにくいかもしれませんが、1月31日の早生まれということもあって、かなり大柄に出ています。欲を言えば、父がモーリスですからもっと幅が出てくるとさらに良いですね。とはいえ、大きくなりすぎても重くなってしまうので、今の時点では十分なサイズだと思います。
── 母ウインオリアートは、420~450kg台で走った、ステイゴールド産駒の牝馬らしい小柄な馬でした。芝の中距離を走り、中央競馬で39戦3勝という戦績を誇るタフネスレディーです。
岡田 ウインオリアートは体高こそありましたが、幅が薄い馬体でした。手肢にも長さがありましたが、それを生かせるだけのトモのパワーが足りなかったという印象です。産駒にはトモに筋肉がついて厚みが出せる種牡馬を配合したいと考え、モーリスを父に選びました。
── 初仔の半兄はストロングリターン産駒でしたが、それも馬体を大きく出したいという意図の現れでしょうか。
岡田 そのとおりです。ステイゴールドを父に持つ繁殖牝馬は腹袋が小さいというか、腹がめくれあがっているように薄い馬が多いため、基本的には仔出しが小さい傾向があります。なぜ最初からモーリスではなかったのかと聞かれると、初仔にどこまで種付け料をかけられるかと考えた時、ストロングリターンだった、としか答えようがありません。初仔にどの程度お金を使えるかという考え方の問題でもあります。
大きく出すことだけを考えると、ダート種牡馬という選択もありますが、それではウインオリアートの良さが出ないと考えました。また、非サンデーサイレンス系の種牡馬の中で芝を走る馬というと配合が限られてしまいます。たとえば、実績がある非サンデーサイレンス系の種牡馬としては、ハービンジャーやルーラーシップなどでしょうか。売ることだけを考えれば、受けの良い種牡馬を配合すれば良いのですが、それは私としては嫌だなと。
── 昨年も「その母馬が走る仔を出すかどうかが最も大事だと思って生産にたずさわっている」とおっしゃっていましたし、とても共感できました。ウインオリアートの22は、岡田さんの意図どおりに大きく出たということで、理想の配合と考えて良いでしょうか?
岡田 はい、思ったより大きく出たという印象ですね。ウインオリアートから馬体の大きい馬が出るまでにもう少し時間がかかると思っていたので、早くからこれぐらい立派な馬を出したのは良い意味で意外でした。馬体の幅がどれぐらい厚くなるかによりますが、ゆくゆくは500kg近い雄大な馬体の馬になるのではないでしょうか。芝のマイル路線で活躍してくれるはずです。
── 本馬は血統的にはサンデーサイレンスの4×3のクロスを持ちます。今年の募集でもサンデーサイレンスのクロスを持つ馬がそれなりに募集されていますが、サンデーサイレンスのクロスに関してはどのようにお考えですか?
岡田 他の牧場さんも、血が濃くなることは良いとは思っていないはずですが、正直な話、仕方ないという感じです。芝で走る産駒を出すことを考えたとき、サンデーサイレンスのクロスを避けてしまうと、選択肢が少なすぎるのです。特にうちの場合は、ステイゴールド肌が多いですし、ビッグレッドファームにはウインブライトやゴールドシップといったステイゴールドの直系種牡馬がいますので、組み合わせは難しく、悩みますね。
3×3にはなるべくしないようにと考えています。ウインシャーロットはサンデーサイレンスの3×3なのですが、生まれてきたときに脚が曲がっていて、そのとき危ないかなと思いました。でも、めちゃくちゃ走っているのですから、難しいところです。
サンデーサイレンスの血が異常なほど優れているということの裏返しでもありますね。走るから繁殖牝馬として帰ってきて、子から孫へと血がつながるわけですし、サンデーサイレンスの血が入っていて活躍するから、種牡馬となって帰ってくるというわけです。自然界としては良いことではないと思いますが、走った馬同士を配合しようとすると、避けられないということですね。