2022-06-25現在データ
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馬体の見かた講座
馬を見る上での考え方から各馬体パーツの基本、種牡馬毎の特徴、専門家へのインタビューも
治郎丸敬之 著 / 連載中

43.下村優樹獣医師(社台F)インタビュー【第3回】 [ノドの病気]

引き続いて、社台ファームで獣医師として活躍する下村優樹さんへのインタビューです。今回は喘鳴症(ノド鳴り)、DDSPといった、外からは見えないだけに私たち一口馬主には今一つ分かりづらく、愛馬が発症すると心配となる、ノドの疾患について詳しく解説頂きました。

喘鳴症(ノド鳴り)の症状

―次は喉の疾患について教えてください。一口馬主DBの会員さんからも、喉の疾患には喘鳴症やDDSP など様々な症状があって分かりにくいため、素人にも理解できるように解説してほしいという声が上りました。

下村優樹獣医師(以下、下村) 運動中にヒューヒューという高い異常呼吸音を発する喘鳴症の代表的なものとして、喉頭片麻痺があります。内視鏡を鼻から入れて、喉を正面から見た写真を見てもらうと分かりやすいのですが、喉は軟口蓋と喉頭蓋、そして披裂軟骨の3つの部位で成り立っています。軟口蓋の上に喉頭蓋がペロッと乗っかっていて、その上に披裂軟骨があります。空気を吸う時に気管への穴が(部分的に)閉鎖することで音が擦れてヒューヒューするのですが、基本的には左側の披裂軟骨の動き(開閉)が悪くなることが原因となります。馬にとっての左側、私たちが真正面から見ると右側の披裂軟骨ですね。

「競走馬ハンドブック(編者:日本ウマ科学界)」より

喘鳴症の競走能力への影響は?

―なるほど、左側の披裂軟骨の開閉が悪くなるのですね。喉の疾患はすぐに手術するべきものからそうでないものまでありますが、競走能力に影響があるかどうかという基準はあるのでしょうか?

下村 喉頭片麻痺には程度(グレード)があります。左側の披裂軟骨が上手く開いたり閉じたりできなくなる度合によって、G1(グレード1)からG4 までに分類されます。私たちは内視鏡の中から水をピュッと出して咽頭部分を刺激することで、安静時における披裂軟骨の開閉の様子を見るのです。

「競走馬ハンドブック(編者:日本ウマ科学界)」より


G1は正常、問題なく開いたり閉じたりができる状態です。G2は開閉は問題ないのですが、右側と左側の披裂軟骨の動きに若干差がでる状態です。たとえば、右側が開いたあとに左側が開いたりと、わずかに時間差が生じてしまう。G3になると、開閉するタイミングがずれるのと、完全な開閉ができないことや、開閉後の静止状態でも左側が少し閉じているように見えます。G4になると、ほとんど披裂軟骨が動かなくなります。ここまでくると、息を吸いたいときに空気が十分に入ってきづらくなります。馬は口で呼吸ができませんので、喉が閉じてしまっていると、負荷を掛けて運動したときに、酸素が全身に行き渡らず苦しいはずです。
―かなり昔の話ですが、ダイワメジャーやハーツクライがノド鳴りになって、ヒューヒューと音がしたというコメントを読んだことがあります。

下村 当時のノド鳴りの原因が何だったのかは具体的にわかりません。ただし、ヒューヒューと音が鳴ってしまっている状態は、喉頭片麻痺の程度としては進行していると考えられます。実は若馬の14%以上がG2以上の所見を有しているとの報告があり、G3までは競走能力には影響がないと調査研究では報告されています。G4を含め、症状の出ている馬については、外科的な処置を施すべきか考えることになります。

今は1歳馬のセールが行われるときにレポジトリーを提出しますが、G4という馬もまれにいますよ。過去にG4という馬がいて、さすがに牧場の方は売らずに自分で走らせたのですが、症状がまったく出ませんでした。実際の競走能力に影響が出るかどうかは、やはり個体差がありますね。喉頭片麻痺は正常に戻るということはなく、むしろG1からG2というように進行していく場合もあります。

DDSPとは

―同じく喉の疾患としてよく聞くDDSPについても教えてください。

下村 DDSPは軟口蓋背方変位のことです。軟口蓋の上に蓋のように喉頭蓋がありますが、喉頭蓋が軟口蓋の下に入り込んでしまいます。そうすると呼吸をするときに苦しくなります。喉頭蓋が薄かったり、未発達の馬はDDSPが起こりやすいです。喉頭蓋がしっかりしてくると入り込まなくなるように、DDSPは成長する中で自然治癒することもあります。

喉頭片麻痺にしてもDDSPにしても、手術をするかどうかは外科医の判断次第です。最近はトレッドミルで馬を動かしながら検査することもできますので、最終的には安静時だけではなく運動中における動きを見て判断することも可能です。

「競走馬ハンドブック(編者:日本ウマ科学界)」より
※右側がDDSP発症例。喉頭蓋が軟口蓋の下に変位しており見えない。



(次回以降に続きます)
前後の記事
第43回 下村獣医師に聞く3[ノドの病気]
著者
治郎丸敬之
新しい競馬の雑誌「ROUNDERS」編集長。週刊Gallopにてコラムを連載中。当コラムの書籍も発刊
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