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馬体の見かた講座
馬を見る上での考え方から各馬体パーツの基本、種牡馬毎の特徴、専門家へのインタビューも
治郎丸敬之 著 / 連載中

35.【種牡馬別】ゴールドアリュール産駒の見かた

今回はゴールドアリュールについて語っていきたいと思います。今年の2月に心疾患のために急死してしまい、これから先に新しい産駒が誕生しない以上、このコーナーで書くべきかどうか迷いましたが、まだラストクロップたちが残っていること、そしてこれだけの名種牡馬について語り継がないわけにはいかないという想いもあり、書き記しておくことにします。

ゴールドアリュールを名種牡馬と呼ぶことにピンと来ない競馬ファンもいるかもしれません。ディープインパクトやキングカメハメハ、ハーツクライのように、産駒たちだけではなく自身もクラシック戦線や芝のG1レースで目立って活躍したことは1度もなく、その主戦場がダート競馬である(あった)以上、多くの競馬ファンに対しては、どうしても地味な印象しか与えられていないのかもしれません。

とはいえ、日本の競馬全体を見渡してみると、実はダートは芝よりもメジャーな存在です。日本全国で行なわれている年間の芝レースの数、およそ1600に対し、ダートレースはおよそ25000と桁が違います。中央競馬がイギリスを手本としてレース体系をつくっただけに、ダートは補完的な存在にすぎないという考えがどこか私たちの中にありますが、レース数の多さという点では、実はダートは芝よりもメジャーな存在であると言っても過言ではありません。つまり、馬を生産して走らせる、もしくは馬を購入して走らせる人たち(一口馬主も含む)にとっては、ダート競馬こそが表舞台なのです。

「生産者たちにとって、種牡馬というのは神さまのような存在である」、と作家の吉川良さんが書いたことがありました。競馬にたずさわる者たちにとって、どぎつい言い方をすれば、種牡馬は人間よりも上の存在であり、競馬界の頂点に立つ神さまなのです。サンデーサイレンス系の種牡馬の中でも、表舞台のダートを滅法得意とする産駒を次々と誕生させるゴールドアリュールは、生産者やバイヤーたちにとっては、まさに神さまの中の神さまのような存在であったといっても過言ではないでしょう。

ゴールドアリュール自身の特徴

海外を含め44頭のG1ホースを輩出したサンデーサイレンスの直仔として、ゴールドアリュールは唯一のダートG1ホースです。異端児というべきか、突然変異というべきか、その外見だけを見ても、なぜゴールドアリュールがダートであれだけ走ったのか分からないのが正直なところだと思います。おそらく誰が見ても、ゴールドアリュールは芝でも走れそうな、むしろ芝の方が合っているはずの伸びやかな馬体をしているからです。たしかにやや繋が立っているところはありますが、それほど極端ではなく、控えめに言っても芝ダート兼用という馬体です。 実際にゴールドアリュールは芝でデビューして、日本ダービーに出走するための賞金を加算するために、7戦目で初めてダート競馬を使われました。そして、この2戦の走りが強烈な印象を残したのか、日本ダービーで5着したのを皮切りに、ダート戦線へと転向したのです。池江泰郎元調教師の判断は慧眼だったと思います。

実質的な話をすると、ゴールドアリュールは芝で走らなかったのではなく、なかなか勝ち切れなかったのです。ワンペース(一本調子)で走ることを得意とする同馬にとって、芝の緩急がついて一瞬の切れ味を問われるような瞬発力勝負の競馬ではなく、ダートで地脚の強さが生かせる競馬の方が勝ちやすかったということ。それでは、なぜ芝で勝ち切れないのか、ワンペースで走る競馬の方が合っているのかというと、ゴールドアリュールの筋肉の質が硬いからです。他のサンデーサイレンスを父にもつ馬たちは、筋肉から関節に至るまで、グニャグニャに映るほどに柔らかいのが特徴ですが、対照的にゴールドアリュールは筋肉が強い分、硬さがあるのです。ダートを走るには、筋肉の強さは絶対的に必要であり、その反面、芝を走るにおいて、筋肉の硬さは勝ち切れなさにつながるということですね。

つまり、ゴールドアリュール産駒にも筋肉の強さと硬さがしっかりと伝わっているからこそ、これだけダートを走る馬たちが続出するということです。このあたりを踏まえ、ゴールドアリュール産駒たちの馬体の見かたを考察していきたいと思います。

ゴールドアリュール産駒の特徴

ゴールドアリュール産駒の代表馬といえば、エスポワールシチーやスマートファルコン、コパノリッキーといった名馬たちが思い浮かびます。 …
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第35回 【種牡馬別】ゴールドアリュール産駒編
著者
治郎丸敬之
新しい競馬の雑誌「ROUNDERS」編集長。週刊Gallopにてコラムを連載中。当コラムの書籍も発刊
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