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馬体の見かた講座
馬を見る上での考え方から各馬体パーツの基本、種牡馬毎の特徴、専門家へのインタビューも
治郎丸敬之 著 / 連載中

社台サラブレッドクラブ 推奨募集馬インタビュー

社台ファームインタビュー2021
昨年同様に、社台サラブレッドクラブの募集馬もリモートでの取材となりました。競馬場にもなかなか入ることができず、一口クラブの募集馬も生で観ることも叶わず、競馬そのものがヴァーチャル(仮想的)なものになってしまいそうな危惧を抱いています。だからこそ、そこに馬がいることを少しでも意識できるようなインタビューにしていきたいと思います。


それでは、さっそく社台ファームの推奨馬全10頭を紹介していきます。今年も現場からの情報を教えてくれるのは、社台ファームの青田さんです。

※以下、カタログ番号の若い順にインタビューを行っており、各馬の並びは推奨の順位を示すものではございません。

【1】サプレザの20(・募集番号 11)

3/10 美浦 田村康仁 厩舎予定
キズナ (母父 Sahm)
5000万円 / 40 (1口 125万円)
― 今年もよろしくお願いします。昨年もおっしゃっていたように、できる限り良い馬や健康な馬をクラブに回したいということで、今年は88頭のラインナップが揃いました。そのうち77頭が社台ファーム提供、そこからさらに厳選した10頭について紹介してもらえるとのことで嬉しい限りです。いち出資者目線でも質問させていただきますね。

まずは最初の推奨馬、サプレザの20について教えてください。

サプレザが来日して、マイルチャンピオンシップで走っていた頃からもう10年も経ったのですね。月日の流れるのは早いものです。サプレザは安定して走る馬で、マイルチャンピオンシップでも勝ち馬から僅差の3着、4着、3着でしたから、偶然走ったのではなく、実力があったのは間違いありません。しかも海外へと長距離輸送してのレースですから、世界レベルの名マイラーでした。

サプレザの20の父はキズナで、母サプレザにとってラストクロップになってしまうのですね。



社台ファーム青田氏(以下、青田) お母さんのサプレザはこの子を産んだ後に亡くなってしまいました。ただ、遺してくれたのが牝馬ということで、そういう意味では血がつながりそうでホッと安心しました。サプレザの子どもが生まれたからクラブへ、という訳ではありませんでしたが、ここまで健康に育ってきたものですから、自然とそのような流れになりました。


― サプレザの20はサプレザ譲りのバランスの良さが馬体にありますね。半兄のサトノインプレッサ(父ディープインパクト)はやや重心が低く、パワフルな印象を受ける馬体を誇っていますが、この馬は手肢も長くて、馬体全体に伸びがあります。


青田 お尻にフォーカスを当てるとモリっと肉付きが良いですよ。前躯にも肉が付いて、実は見た目よりもしっかりと実が入っている馬なのです。顔が大きくないですし、首差しがスラっとしているので、全体として見たときにマッチョには映らないですよね。たしかに、パッとみるとキズナ産駒には見えないかもしれません。お母さんは均整の取れた馬体をしていましたので、お母さんの特徴も出ているのかもしれません。骨量と父から受け継いだ筋肉量のバランスが取れているということです。品のある馬に育ちましたね。


― 父キズナは前向きな気性の産駒が多いイメージですが、この仔はどうですか?


青田 気性的には、写真のようなおっとりとした表情とは裏腹に、気持ちの入った面もあり、活気がある馬ですよ。キズナ産駒らしいということなのかもしれませんが、ピリッとしたところがあります。キズナ産駒の距離適性の幅広さは母系の良さを引き出しているからであり、そういう意味では、この馬にとってはお母さんが得意としたマイル戦が最適な舞台になるのではないかと考えています。クラシックなど華やかな舞台に進み、繁殖牝馬として牧場に帰ってくる頃には立派な勲章を下げてくれていると期待しています。




【2】フローレスダンサーの20(・募集番号 16)

3/29 美浦 田中博康 厩舎予定
モーリス (母父 ハービンジャー)
4000万円 / 40 (1口 100万円)
― 次はフローレスダンサーの20です。父モーリスで、今年の日本ダービーに出走したバジオウ(父ルーラーシップ)の半弟になります。祖母にダンスインザムード、一族には菊花賞馬ダンスインザダークなどがいます。血統的な意味でも、この馬は人気になりそうですね。


青田 兄がタイムリーに活躍してくれていますし、モーリスも結果を出していますから、人気になってくれるのではと期待しています。この馬は肉付きがしっかりしていて、重厚感とまではいきませんが、力感が伝わってくる馬体です。


― お兄さんのバジオウはルーラーシップ産駒らしく、馬体のフレームが雄大なタイプでしたが、この馬は筋肉量が豊富でモーリス産駒らしいと感じました。ウォーキング動画を観ても、トモの踏み込みが良く、脚元も丈夫そうですね。


青田 バジオウもそうでしたので母系からの遺伝かもしれませんが、背中が長めのシルエットに出ており、距離はマイルから2000m、むしろ2000mを中心に走ってくれるのではないでしょうか。モーリスも2000mの天皇賞・秋を勝ちましたし、母フローレスダンサーの現役時代のことを考えても、この馬もそのあたりの距離で活躍してくれるはずです。気性的には前向きで前進気勢が旺盛ですね。この一族は良い意味で気の強さがあるので、そのあたりが出ているのではないかと感じさせます。クラシック路線を目指してもらいたい1頭です。


― モーリスの初年度産駒は、仕上がりが早い馬もいれば、逆にデビューが遅い馬もいたりして、ややバラつきがあると感じました。 …
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第96回 社台サラブレッドクラブ 2021推奨募集馬インタビュー
著者
治郎丸敬之
新しい競馬の雑誌「ROUNDERS」編集長。週刊Gallopにてコラムを連載中。当コラムの書籍も発刊
馬体の見かた講座
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