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馬体の見かた講座
馬を見る上での考え方から各馬体パーツの基本、種牡馬毎の特徴、専門家へのインタビューも
治郎丸敬之 著 / 連載中

42.下村優樹獣医師(社台F)インタビュー【第2回】 [疲れが溜まりやすい馬体]

前回に引き続いて、社台ファームで獣医師として活躍する下村優樹さんへのインタビューです。今回はソエや跛行の解説から、身体の柔らかさ、そしてコズミのメカニズムから、疲れが溜まりにくい馬を見分けるポイントのひとつをご紹介頂きました。

ソエの原因と治療

下村優樹獣医師(以下、下村) 骨瘤と同じく前肢が腫れるソエという疾患があります。ソエは管骨の背側面(第3中手骨の前側)に症状が出ます。骨膜の強い炎症であり、触っただけで相当な痛みがありますね。ほとんどの場合は乗り運動を始めてから発症することが多く、強い運動による負荷が掛かって起こります。強い調教を何度も強いられる馬にソエが多いのはこれが理由です。

レースに出走する際の最終追い切りで出てしまう馬もいます。管骨の疲労骨折を併発する馬もいて、そこまで行くと本当に痛くてびっこを引いて歩くようになってしまいます。

―調教等による強い負荷が掛かるとソエが出やすいということですね。骨瘤とソエですと、骨瘤の方がやや早い時期に発症しやすく、ソエの方があとから出やすいという認識で良いでしょうか?

下村 どちらが必ず先に発症するというものではありませんが、骨瘤はデビューする前の乗り運動している育成期の段階で出ることが多く、ソエは同時期からどちらかというと競走期(の2歳齢以下の若馬において)に出やすいです。骨瘤がおさまってひと安心していると、その後にソエが出たりすることもあります。そういう馬を見ると、その時点での成長段階としてはギリギリのラインで調教をしていたのだということが分かりますね。
―骨瘤とソエのどちらが長引くのでしょうか?

下村 それは程度によりますが、乗り運動を始めてから起こるソエの方が、どちらかというと長引きますかね。骨瘤であれば、ある程度おさまれば運動できますから。ただし、ソエが出ている馬も、程度によっては調教も行えますし、軽度であればレースに使える馬もいますからね。

治療法としては、馬房で休養をさせたり、冷水療法やショックウェーブ(衝撃波療法)、圧迫包帯などがあります。早期発見され、軽度であれば予後は良好ですが、疲労骨折を併発した場合は、半年ほど休養を要することもあります。

跛行について

―続いて、跛行について教えてください。跛行とひと言で言ってもいろいろあると思いますが、ごく一般的な認識としては、歩様が乱れることを跛行と言っていると思います。

下村 実は跛行とは、病的な状態であったり、身体のどこかが痛いことによって、運動器の機能障害が生じていることを指します。つまり、跛行というのは、脚のどこかが悪いことで起こるものだけではないということです。たとえば、首や背中、肩などの筋肉・関節のどこかが痛いことでも跛行は起こりうるのです。歩様が乱れたことで、私たちはどこかの運動器に障害があるのではと分かるのであって、四肢のどこかが痛いことイコール跛行ではありません。主原因はどこか別にあって、それによって歩様に乱れが起こることもあるということですね。

跛行はごく日常的な疾患です。脚先から首の筋肉、背中を触ってみたり、脚を曲げたり引っ張ったり、レントゲンを撮ったり、エコーで見てみたり、血液検査をしたりしても、主原因が分からないことも多いです。原因が特定できずに馬房休養している間に、案外自然と治ったりもします。いちばん多く、いちばん悩む疾患が跛行ですね。

コズミやすい馬とは?

―跛行ではないのですが、筋肉がコズんで歩様が硬かったりすることがありますよね。 …
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第42回 下村獣医師に聞く2[疲れやすい馬体とは]
著者
治郎丸敬之
新しい競馬の雑誌「ROUNDERS」編集長。週刊Gallopにてコラムを連載中。当コラムの書籍も発刊
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