2019年社台サラブレッドクラブ推奨1歳馬を見てきました
吉田哲哉氏インタビュー 後編
社台ファーム副代表で、社台レースホース代表でもある吉田哲哉さんへのインタビュー。前編では社台ファームの坂路コースリニューアルについて教えてもらいましたが、後編はいよいよ注目の本年1歳馬について、実馬を見ながらクラブ代表自らに解説いただくという、本連載でも初のぜいたくな試みです。
90頭もの募集馬の中から10頭の推奨馬を厳選して頂きましたので、どの馬も良い馬であることに疑いはありませんが、単なるクラブ推奨馬の列挙にとどまらず、「なぜその馬が良いのか」を、馬体、血統、気性などさまざまな角度から吉田哲哉さんにその馬を前にして解説頂き、余すところなく読者のみなさまへお届けします。
種牡馬ごとの馬を見るポイントや、哲哉さん独自の相馬眼などもちりばめられていますので、今年の同クラブ出資を検討中の方はもちろん、多くの一口馬主の方にとっても、募集時期の1歳馬を評価する上での、たくさんのヒントが得られるはずです。
90頭もの募集馬の中から10頭の推奨馬を厳選して頂きましたので、どの馬も良い馬であることに疑いはありませんが、単なるクラブ推奨馬の列挙にとどまらず、「なぜその馬が良いのか」を、馬体、血統、気性などさまざまな角度から吉田哲哉さんにその馬を前にして解説頂き、余すところなく読者のみなさまへお届けします。
種牡馬ごとの馬を見るポイントや、哲哉さん独自の相馬眼などもちりばめられていますので、今年の同クラブ出資を検討中の方はもちろん、多くの一口馬主の方にとっても、募集時期の1歳馬を評価する上での、たくさんのヒントが得られるはずです。
広大な社台ファーム内を車で回り各厩舎にお邪魔しました
お忙しい中ありがとうございました
お忙しい中ありがとうございました
2019年度募集開始にあたって
― こうして馬を間近に見せてもらいながら、吉田哲哉さんに解説してもらえるなんて、一口馬主冥利に尽きます。
はじめに、今年の1歳募集馬たちは新設の坂路コースを主にした調教がスタートした最初の世代となりますが、全体的なテーマのようなものはありますか?
吉田哲哉氏(以下、吉田) これは毎年そうですが、クラブに入れる馬はまずは健康に不安のないことが前提です。それから、誰もがほしがるような憧れの血統の馬、たとえば今ですとディープインパクト産駒やロードカナロア産駒などはもちろんのこと、それだけではないバラエティに富んだ馬たちもラインナップに入れるようにしています。
馬の歴史を紐解いていくと、あっと驚くような亜流や傍流の血統からも名馬が誕生しているものです。そのような馬の芽を摘みたくないと、社長(吉田照哉氏)ともよく話しますし、私もそのように考えています。全ての馬がクラシックを目指すのではなく、ダート馬がいて、まだ無名の種牡馬がいてと、多様な馬たちが表舞台で活躍するチャンスをつくるのも、クラブ法人の役割のひとつかと思います。
― 売れる本しか置かない本屋さんは、本好きにはつまらないですからね(笑)。社台サラブレッドクラブのカタログは眺めているだけで面白いです。
それではいよいよ、全10頭のクラブ推奨馬を紹介いただきましょう。なお、各馬の掲載順は当日の取材行程順であり、推奨の順位を示すわけではありません。
はじめに、今年の1歳募集馬たちは新設の坂路コースを主にした調教がスタートした最初の世代となりますが、全体的なテーマのようなものはありますか?
吉田哲哉氏(以下、吉田) これは毎年そうですが、クラブに入れる馬はまずは健康に不安のないことが前提です。それから、誰もがほしがるような憧れの血統の馬、たとえば今ですとディープインパクト産駒やロードカナロア産駒などはもちろんのこと、それだけではないバラエティに富んだ馬たちもラインナップに入れるようにしています。
馬の歴史を紐解いていくと、あっと驚くような亜流や傍流の血統からも名馬が誕生しているものです。そのような馬の芽を摘みたくないと、社長(吉田照哉氏)ともよく話しますし、私もそのように考えています。全ての馬がクラシックを目指すのではなく、ダート馬がいて、まだ無名の種牡馬がいてと、多様な馬たちが表舞台で活躍するチャンスをつくるのも、クラブ法人の役割のひとつかと思います。
― 売れる本しか置かない本屋さんは、本好きにはつまらないですからね(笑)。社台サラブレッドクラブのカタログは眺めているだけで面白いです。
それではいよいよ、全10頭のクラブ推奨馬を紹介いただきましょう。なお、各馬の掲載順は当日の取材行程順であり、推奨の順位を示すわけではありません。
【1】アヴニールセルタンの18 (募集番号45)
母アヴニールセルタンは2014年の仏オークス馬。このような馬が日本にいるということが素晴らしいことであり、語り始めると2時間ぐらい掛かってしまうと思います(笑)。日本でいうとウオッカが繁殖牝馬として向こうに行ってしまうようなものですから、フランスの人に怒られてしまうかもしれませんね。
― 馬体的にはどうですか?パッと見た感じは、ヨーロッパの重厚な母系にもかかわらず、さすがディープインパクト産駒らしく、軽さもありますね。力強さと柔らかさ、重厚さと軽さという、相反する要素が融合されて理想的な馬体に見えます。
吉田 胸の幅が広くて、男馬みたいですよね。この時期の牝馬はまだ幅が薄く、ぺしゃんこに映るのが普通です。この馬は今の時期から馬体が充実して、素材の良さが現れています。トモもそうですが、特に前駆の肩がグッと張っているのは、一般的な良い馬の馬体の特徴のひとつです。
斜め前方から見ると前駆のボリュームがよく分かる
グッドルッキングホースであった全姉のデゼルと比べて、大きく違うところはありません。どちらも見栄えのする良い馬ですね。こうして動かして見ていると、身体は筋肉質であるにもかかわらず、硬さがなく、ゆったりして柔らかく歩けているのが分かります。トモの踏み込みにバネがありますね。この時期に夜間放牧に出し始めると、腰がふらつき始める馬がいますが、この馬は今のところ大丈夫そうです。今は20時間ぐらい放牧に出していますから、さすがに馬にとってはしんどいのですよ。
― 夜間放牧は鍛えられる反面、馬に疲れが残ってしまうことがあるのですね。
吉田 冬季(真冬の1月~2月)の夜間放牧も試行錯誤していますが、一時期、かなり限界に近いところまでやったことがありました。そのときは成長が遅れたり、上に大きくなりすぎたり、馬体が崩れた馬もいましたので、今は調整して控えめに放牧に出すようにしています。今の世代の方が、明らかに馬体は良く映りますね。
― アヴニールセルタンの18は父ディープインパクトという超良血馬ですが、どちらに似ていますか?
吉田どちらかというと、お母さんに似ているのかなと思います。ディープインパクトは母系の良さを引き出すタイプの種牡馬ですからね。まだ上(デゼル)も競馬していないので何とも言えませんが、スピードがあると思いますよ。
― それにしても、大人しくて落ち着いている馬ですね。
吉田そうですね。1歳の時期は放牧に出ている時間が長いため、いかに人が関わるかが難しい課題になってきます。人の手が掛かっているかどうかは、のちのちその馬の精神状態や扱いやすさにつながってきます。放牧は長くしたいけど、人の手も掛けた方が良いというジレンマを抱えています。どちらかを放棄すれば、どちらかが片手落ちになってしまうのです。
1歳馬離れした落ち着きがあり、超良血馬らしい気品を感じる馬だ