2022-08-07現在データ
HOME > ノウハウ読み物 > 2019年社台サラブレッドクラブ推奨1歳馬を見てきました 【馬体の見かた講座】
馬体の見かた講座
馬を見る上での考え方から各馬体パーツの基本、種牡馬毎の特徴、専門家へのインタビューも
治郎丸敬之 著 / 連載中

2019年社台サラブレッドクラブ推奨1歳馬を見てきました

吉田哲哉氏インタビュー 後編
社台ファーム副代表で、社台レースホース代表でもある吉田哲哉さんへのインタビュー。前編では社台ファームの坂路コースリニューアルについて教えてもらいましたが、後編はいよいよ注目の本年1歳馬について、実馬を見ながらクラブ代表自らに解説いただくという、本連載でも初のぜいたくな試みです。

90頭もの募集馬の中から10頭の推奨馬を厳選して頂きましたので、どの馬も良い馬であることに疑いはありませんが、単なるクラブ推奨馬の列挙にとどまらず、「なぜその馬が良いのか」を、馬体、血統、気性などさまざまな角度から吉田哲哉さんにその馬を前にして解説頂き、余すところなく読者のみなさまへお届けします。

種牡馬ごとの馬を見るポイントや、哲哉さん独自の相馬眼などもちりばめられていますので、今年の同クラブ出資を検討中の方はもちろん、多くの一口馬主の方にとっても、募集時期の1歳馬を評価する上での、たくさんのヒントが得られるはずです。


広大な社台ファーム内を車で回り各厩舎にお邪魔しました
お忙しい中ありがとうございました

2019年度募集開始にあたって

― こうして馬を間近に見せてもらいながら、吉田哲哉さんに解説してもらえるなんて、一口馬主冥利に尽きます。

はじめに、今年の1歳募集馬たちは新設の坂路コースを主にした調教がスタートした最初の世代となりますが、全体的なテーマのようなものはありますか?



吉田哲哉氏(以下、吉田) これは毎年そうですが、クラブに入れる馬はまずは健康に不安のないことが前提です。それから、誰もがほしがるような憧れの血統の馬、たとえば今ですとディープインパクト産駒やロードカナロア産駒などはもちろんのこと、それだけではないバラエティに富んだ馬たちもラインナップに入れるようにしています。

馬の歴史を紐解いていくと、あっと驚くような亜流や傍流の血統からも名馬が誕生しているものです。そのような馬の芽を摘みたくないと、社長(吉田照哉氏)ともよく話しますし、私もそのように考えています。全ての馬がクラシックを目指すのではなく、ダート馬がいて、まだ無名の種牡馬がいてと、多様な馬たちが表舞台で活躍するチャンスをつくるのも、クラブ法人の役割のひとつかと思います。


― 売れる本しか置かない本屋さんは、本好きにはつまらないですからね(笑)。社台サラブレッドクラブのカタログは眺めているだけで面白いです。


それではいよいよ、全10頭のクラブ推奨馬を紹介いただきましょう。なお、各馬の掲載順は当日の取材行程順であり、推奨の順位を示すわけではありません。

【1】アヴニールセルタンの18 (募集番号45)

父 ディープインパクト 5/10生 7,000万円(40口)関西予定
吉田 いきなりアヴニールセルタンの18です!

母アヴニールセルタンは2014年の仏オークス馬。このような馬が日本にいるということが素晴らしいことであり、語り始めると2時間ぐらい掛かってしまうと思います(笑)。日本でいうとウオッカが繁殖牝馬として向こうに行ってしまうようなものですから、フランスの人に怒られてしまうかもしれませんね。


― 馬体的にはどうですか?パッと見た感じは、ヨーロッパの重厚な母系にもかかわらず、さすがディープインパクト産駒らしく、軽さもありますね。力強さと柔らかさ、重厚さと軽さという、相反する要素が融合されて理想的な馬体に見えます。

吉田 胸の幅が広くて、男馬みたいですよね。この時期の牝馬はまだ幅が薄く、ぺしゃんこに映るのが普通です。この馬は今の時期から馬体が充実して、素材の良さが現れています。トモもそうですが、特に前駆の肩がグッと張っているのは、一般的な良い馬の馬体の特徴のひとつです。

斜め前方から見ると前駆のボリュームがよく分かる


グッドルッキングホースであった全姉のデゼルと比べて、大きく違うところはありません。どちらも見栄えのする良い馬ですね。こうして動かして見ていると、身体は筋肉質であるにもかかわらず、硬さがなく、ゆったりして柔らかく歩けているのが分かります。トモの踏み込みにバネがありますね。この時期に夜間放牧に出し始めると、腰がふらつき始める馬がいますが、この馬は今のところ大丈夫そうです。今は20時間ぐらい放牧に出していますから、さすがに馬にとってはしんどいのですよ。


― 夜間放牧は鍛えられる反面、馬に疲れが残ってしまうことがあるのですね。

吉田 冬季(真冬の1月~2月)の夜間放牧も試行錯誤していますが、一時期、かなり限界に近いところまでやったことがありました。そのときは成長が遅れたり、上に大きくなりすぎたり、馬体が崩れた馬もいましたので、今は調整して控えめに放牧に出すようにしています。今の世代の方が、明らかに馬体は良く映りますね。


― アヴニールセルタンの18は父ディープインパクトという超良血馬ですが、どちらに似ていますか?

吉田どちらかというと、お母さんに似ているのかなと思います。ディープインパクトは母系の良さを引き出すタイプの種牡馬ですからね。まだ上(デゼル)も競馬していないので何とも言えませんが、スピードがあると思いますよ。


― それにしても、大人しくて落ち着いている馬ですね。

吉田そうですね。1歳の時期は放牧に出ている時間が長いため、いかに人が関わるかが難しい課題になってきます。人の手が掛かっているかどうかは、のちのちその馬の精神状態や扱いやすさにつながってきます。放牧は長くしたいけど、人の手も掛けた方が良いというジレンマを抱えています。どちらかを放棄すれば、どちらかが片手落ちになってしまうのです。


1歳馬離れした落ち着きがあり、超良血馬らしい気品を感じる馬だ


【2】アブソリュートレディの18 (募集番号40)

父 Le Havre 4/24生 5,000万円(40口)関東予定
― 次はアブソリュートレディの18です。 …
本コンテンツは、プレミアム会員登録でご覧いただけます。
全文10966文字 (現在2438文字まで表示)

プレミアム会員ご案内
すでにプレミアム会員の方は ログイン してご覧ください
前後の記事
第68回 2019年社台サラブレッドクラブ推奨1歳馬を見てきました
著者
治郎丸敬之
新しい競馬の雑誌「ROUNDERS」編集長。週刊Gallopにてコラムを連載中。当コラムの書籍も発刊
馬体の見かた講座
2022年ウインレーシングクラブ推奨1歳馬を見てきました 2022年社台サラブレッドクラブ推奨1歳馬を見てきました 2022年G1サラブレッドクラブ推奨1歳馬を見てきました [新種牡馬] レイデオロ・ニューイヤーズデイ産駒の傾向と対策 [新種牡馬] ブリックスアンドモルタル・スワーヴリチャード産駒の傾向と対策 斉藤崇史厩舎・福田調教助手に聞く「口向き」の深い話 競走馬の「口向きが悪い」とはどういうこと? 【種牡馬別】キズナ産駒編 競走馬の「背中が良い」とはどういうこと? 岡田牧雄氏に聞く 「現役種牡馬13頭の評価と馬体の見かた」 岡田牧雄氏に聞く「馬を見る上で大切にすべきこと」 インゼルTC代表に聞く 設立の経緯と推奨馬5頭 2021年活躍3歳馬の馬体分析【マイル・ダート編】 2021春クラシック活躍馬の馬体分析 社台サラブレッドクラブ 2021推奨募集馬インタビュー G1サラブレッドクラブ 2021推奨募集馬インタビュー [新種牡馬]マインドユアビスケッツ、サトノクラウン、レッドファルクス産駒の傾向と対策 [新種牡馬]サトノダイヤモンド、リアルスティール産駒の傾向と対策 【種牡馬別】ジャスタウェイ産駒編 「馬体の緩さ」をあらためて整理する【後編】 「馬体の緩さ」をあらためて整理する【前編】 【種牡馬別】エピファネイア産駒編 三冠牝馬デアリングタクトの全妹に会ってきました ファンディーナの初仔で学ぶ当歳馬の見かた 一口馬主は血統の割に「高い馬」「安い馬」どちらを狙うべきか 個人馬主として、重賞馬に出会うまでに学んだこと 2020春クラシック活躍馬の馬体分析【牡馬編】 2020春クラシック活躍馬の馬体分析【牝馬編】 社台サラブレッドクラブ 2020推奨募集馬インタビュー G1サラブレッドクラブ 2020推奨募集馬インタビュー イスラボニータ、ロゴタイプ、サトノアラジン産駒の傾向と対策 ドレフォン、キタサンブラック産駒の傾向と対策 エピファネイア&キズナの好発進とこれからの社台SS 【種牡馬別】ルーラーシップ産駒編 下村獣医師に聞く[見学ツアーで馬を見るときのポイント] 下村獣医師に聞く[馬体が「ゆるい」とは?] 下村獣医師に聞く[去勢の狙いとメカニズム] ノーザンファーム空港でTCライオン募集馬を見てきました セリ市で学ぶ:馬を間近で見る実践 セリ市で学ぶ:背中の筋肉の見かた 馬体のメリハリ、目、顔つき 毛艶の良さから分かること 2019年社台サラブレッドクラブ推奨1歳馬を見てきました [新種牡馬]ミッキーアイル&エピファネイア・キズナ・リアルインパクト [新種牡馬]モーリス産駒の傾向と対策 [新種牡馬]ドゥラメンテ産駒の傾向と対策 新種牡馬の産駒を見る上で大切にすべきこと 【種牡馬別】キンシャサノキセキ産駒編 馬体のバランスを実例から見る 馬の動きを「メトロノーム」のイメージで見る 現役馬と1歳馬の違い、牡馬と牝馬の違い 「背中が良い」とはどんな馬? 素質以外に重要な要素 ゲートの出方は天性のもの? 胴体から距離適性を見分ける セリ上場馬とクラブ募集馬の違い 【種牡馬別】ロードカナロア産駒編 【種牡馬別】オルフェーヴル産駒編 下村獣医師に聞く6[丈夫な馬体とは] 下村獣医師に聞く5[気性の見分け方] 梁川正普氏インタビュー【後編】 梁川正普氏インタビュー【前編】 秋田博章氏インタビュー【後編】 秋田博章氏インタビュー【中編】 秋田博章氏インタビュー【前編】 下村獣医師に聞く4[脚元の健康] 下村獣医師に聞く3[ノドの病気] 下村獣医師に聞く2[疲れやすい馬体とは] 下村獣医師(社台F)に聞く1[OCDと骨瘤] 【応用理論】2)馬体評価プロセスの体系化 【応用理論】1)より実践的な馬体の見かたへ 【種牡馬別】シンボリクリスエス産駒編 【種牡馬別】ブラックタイド産駒編 【種牡馬別】クロフネ産駒編 【種牡馬別】ゴールドアリュール産駒編 【種牡馬別】ハービンジャー産駒編 ハリー・スウィーニ氏インタビュー【後編】 ハリー・スウィーニ氏インタビュー【中編】 ハリー・スウィーニ氏インタビュー【前編】 【種牡馬別】ネオユニヴァース産駒編 【種牡馬別】ダイワメジャー産駒編 【種牡馬別】ハーツクライ産駒編 【種牡馬別】キングカメハメハ産駒編 【種牡馬別】ディープインパクト産駒編 岡田牧雄氏インタビュー【後編】 岡田牧雄氏インタビュー【中編】 岡田牧雄氏インタビュー【前編】 基礎編を振り返って 「歩様」は前から見ると分かりやすい 「歩様」を見る際の4つのポイント 歩き方の種類と「歩様」の基礎 「内向・外向」、「後肢」の肢勢 馬の肢勢~「前肢」の注意点 「飛節」を見るポイント 「後ろ脚の筋肉」の見かた 馬の生命線となる「蹄」 脚下のパーツ「球節」「繋」 前脚のパーツ「前腕」「膝」「管」 肺と心臓をあらわす「胸」 「尻」と「尻尾」の見かた 「背中」の見かたと「腹」との関係 「首」「き甲」「肩」を見る時のポイント 心を映し出す「目」と「耳」 理想的な「頭部」とは? さまざまなプロポーションの見方 馬体のプロポーションから分かること 父に似ていることには意味がある 美点を見るか欠点を見るか はじめに
(連載中)