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HOME > ノウハウ読み物 > 【馬体の見かた講座】86.一口馬主は血統の割に「高い馬」「安い馬」どちらを狙うべきか
馬体の見かた講座
馬を見る上での考え方から各馬体パーツの基本、種牡馬毎の特徴、専門家へのインタビューも
治郎丸敬之 著 / 連載中

一口馬主は血統の割に「高い馬」「安い馬」どちらを狙うべきか

山口功一郎オーナーインタビュー(後編)
前編に引き続き、アルクトスやシャインガーネットの活躍で知られる山口功一郎オーナーのインタビューです。今回の後編では、セリ市における駆け引きから、一口馬主における「価格レンジ」の考え方についても語っていただきました。個人馬主と一口馬主の比較論の中に、金融業界で活躍する山口オーナーらしい、お金と心理を絡めた貴重なアドバイスが詰まっています。

個人馬主と一口馬主を経験して見えてきたことは?

山口功一郎オーナー(以下、山口) (個人馬主で)芝の重賞を勝つことは本当にハードルが高いです。G2やG3でもそうですが、G1ですとなおさら。この前、調べてみたのですが、2019年の平地G1が24レースあって、そのうちクラブ馬が15レースを勝っているのですよ。残りの9レースが個人馬主によるものですが、その中にはダーレーやノースヒルズという大牧場の馬も入っており、セリで購買された馬に限ってはたったの4頭だけなのです。たとえばセレクトセールだけでも全体として200億円を超える売買が行われており、また他のセリ市も含めると数千頭の中から4頭しか当たりくじが入っていないということです。確率論で言うと、50億円は使わないとG1馬を手にすることができないのです。


― 確かにそうですね。その感覚は、一口馬主ファンには伝わりにくいかもしれません。個人馬主としてG1馬を所有するのは奇跡に近く、一口馬主は、何というか、恵まれているということですね。


山口 私もキャロットやシルク、サンデーなどで一口を持っていますが、(これらのクラブを)合わせた全募集馬約250頭の中に毎年5頭ぐらいはG1馬が入っていますからね。

それに対して、個人馬主としてG1を勝つことは本当に難しいことですし、アルクトスとシャインガーネットのおかげで2年連続で重賞を勝たせてもらっているのは運の要素が大きいと思っています。馬の購入価格帯を上げたことや、少しですが馬を見られるようになってきたこともありますが、あくまでも走る馬を持てる確率を上げることしかできません。どれだけ走る馬でも、突然怪我をして走れなくなるなんてこと、よくありますから。

かつてカーボナードというディープインパクト産駒を持っていまして、デビュー3戦目のサウジアラビアRCで3着(勝ち馬はダノンプレミアム)したとき、この馬で初めて重賞を勝てるのではないかと思いました。その矢先、腰フラで亡くなってしまいました。この時はさすがに絶望的な気持ちになりましたよ。なんでこの馬なんだと思ってしまいました。たとえ未勝利の馬であっても落ち込むのに、うちのエースだと思っていた馬でしたからね。

個人馬主の私に初勝利をプレゼントしてくれたアイナマーリエという馬がいまして、500万下を勝って2勝目を挙げたあと、外厩に放牧に出したとき馬房を蹴破ったことで肢を傷め、その場で競走能力喪失ということで引退になったこともあります。これからという時に、さすがに絶望しましたよ。そんなことばかりですよ。脚の速い馬を選ぶのも難しいし、さらに無事これ名馬で終わらせるのも難しい。馬主にはいろいろなハードルが待ち構えていますよ。

セールでの心理戦

― これからという時に限って、アクシデントや怪我は起こりますよね。山口オーナーは先日、セレクトセールにも参加されていたように、毎年セリにも積極的に足を運んでいらっしゃいますが、セレクトセールにおける成功例や失敗例はありますか?


山口 基本的な考え方として、どれだけ良い馬であっても必ずしも走るわけではありませんから、あまりムキにならないようには心掛けています。予算を決めて、それ以上は追わないということです。それから、私はセリの序盤で買うことが多いのです。アントリューズも1番目ですし、バトーデュシエルも3番目ですし、シャインガーネットも15番目です。というのは、過去のセレクトセールを見返してみると、序盤に未来の活躍馬がいるのですが、まだセリが温まっていない状況なので価格がそれほど釣り上がらないのです。本命が中盤や終盤にいる馬主さんは、序盤は無理して競ってこない。100番目ぐらいになってくると、ここで買わないとという心理が働くので競り上がりやすいのです。絶対買うマンが出てくると、絶対買えないですからね(笑)。

たとえば、レインボーライン(天皇賞・春)は2014年の1歳馬の1番目でしたし、ディアドラは2015年の1歳馬の3番目でした。実はディアドラは私の候補の中に入っていたのですが、その後に本命がいたのでスルーしてしまいました。そして、2017年のセレクトセールにおいて、1歳の5番目に登場したダイワメジャー産駒を競ったんです。買いたい気持ちは結構強かったのですが、4000万円ぐらいまで行ったところで、まだ序盤だしあまり熱くならなくてもと思って降りてしまいました。その馬がのちのアドマイヤマーズです。そのときの自分の心理状況も省みて、これからはその心理の裏を突いて序盤から積極的に攻めようと決めました。


― セレクトセールで身銭を切った者にしか分からない、すごいノウハウですね。 …
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著者
治郎丸敬之
新しい競馬の雑誌「ROUNDERS」編集長。週刊Gallopにてコラムを連載中。競馬ブログ「ガラスの競馬場」を主宰。当コラムの書籍も発売中
馬体の見かた講座
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(連載中)