2024-06-22現在データ
HOME > ノウハウ読み物 > 引退競走馬のリトレーニング現場を訪ねてきました 【馬体の見かた講座】
馬体の見かた講座
馬を見る上での考え方から各馬体パーツの基本、種牡馬毎の特徴、専門家へのインタビューも
治郎丸敬之 著 / 連載中

引退競走馬のリトレーニング現場を訪ねてきました

2500頭以上の元競走馬が活躍する乗馬クラブクレイン インタビュー
一口馬主を始めてしばらくすると、自分の出資馬が現役を引退した後どうなるのかという疑問が頭をよぎることがあります。牝馬であれば繁殖牝馬にと想像できますが、牡馬で種牡馬になれる馬はひと握りですから、それぞれの道を見つけていかなければなりません。そのうちの1つとして乗用馬への転向があります。

今回は引退競走馬のリトレーニングに積極的に取り組んでいる乗馬クラブクレインさんに伺い、競走馬が乗馬に転向する過程などについて取材してきました。

乗馬クラブクレイン千葉 富津

ご存知の通り乗馬クラブクレインさんは全国展開している大手の乗馬クラブですが、今回お伺いしたのはリトレーニング拠点もある「乗馬クラブクレイン千葉 富津」。都心から車で1時間ほどですが、のどかな風景に広大な敷地が広がります。

実はひとくちに元競走馬のリトレーニングといっても、レッスンに参加できる乗用馬を育成するものと、競技用を目指すリトレーニングの2種類があります。

乗馬クラブクレインさんの場合、前者は会員さんも一緒に参加され、指導員の補助を受けながら、自分たちで安全に取り扱える乗用馬を育成する形となります。そして今回はこちらの所長である加藤さんに、おもに後者の競技用に向けてのリトレーニングについてお話を聞くことができました。加藤さんは競技選手として全日本総合馬術選手権の元チャンピオンであり、シドニー五輪出場のオリンピアンでもあります。


加藤大助さん

乗馬クラブクレイン千葉 富津所長。専修大学馬術部出身。全日本総合馬術選手権で優勝4回。シドニーオリンピック総合馬術個人/総合馬術団体出場など。

日本の乗馬クラブに元競走馬が多い理由は?

──この度は貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。今回クレインさんに話を伺いたいと思ったのは、非常に多くの元競走馬が在籍している乗馬クラブだと聞いたからです。まずは元競走馬の具体的な頭数や比率を教えてください。


乗馬クラブクレイン千葉 富津 所長 加藤大助氏(以下、敬称略) 乗馬クラブクレインには現在(2024年4月)約3100頭の乗用馬がいて、そのうちの約2600頭が元競走馬です。85%ぐらいが、競走馬を引退して乗用馬に転向した馬ということになりますね。当クラブは国内40か所あり、馬房数も多いため、たくさんの元競走馬を受け入れることができています。


── 2000頭を優に超える元競走馬の活躍の場をつくっていただいて、感謝の気持ちでいっぱいです。実は僕は東京の町田に住んでいまして、今回の取材に際して調べていたところ、クレインさんは町田にもあることを知りました。


加藤 実は東京にはその町田(乗馬クラブクレイン東京)を含め、いわゆる乗馬クラブは4つしかありません。野球場1面・テニスコート1面・プール1面を合わせたぐらいの敷地、そこに厩舎スペースが必要ですから、それなりの広さが必要になってきます。そのため、どうしても神奈川や千葉、埼玉の方が乗馬クラブは多くなります。


──幸いにも近所にあって良かったです(笑)。全国に拠点が多いため、元競走馬の頭数も多いのは分かるのですが、比率が非常に多いのは何か理由があるのでしょうか?


加藤 日本でも20年ほど前から、「スポーツホース」という乗用馬品種の生産が馬術の世界では始まっています。ただ、数が限られていますので、元競走馬の転用が多いのが現状ですね。日本の馬産は、基本的にはサラブレッドの生産であり、競走馬の生産になります。そのため、乗用馬における元競走馬の比率は自然と高くなります。

また、競技をメインにされている乗馬クラブさんですと輸入馬が多くなってきますし、うちのように乗馬クラブで馬を持って、会有馬として会員さんに乗ってもらうところはサラブレッドが多くなってくる傾向はあります。乗馬クラブの特色によって、元競走馬の比率は違ってくるのではないでしょうか。

今回の取材で登場してくれたリトレ中の元競走馬。サンティーニ(左・中央4勝)、ウエストンバート(右・中央3勝)はともに元一口クラブ馬でもある。なお、騎乗者の平永健太さん(右)は2018年アジア大会総合馬術団体の金メダリスト、樫木俊さん(左)は2023年全日本総合馬術選手権3位などの実力者。
──元競走馬を乗馬に転用するためには、相応の訓練が必要だと思います。現在の体制を教えてください。


加藤 ここ乗馬クラブクレイン千葉 富津には、乗馬クラブだけではなく、競技をメインにする選手を集めた「エクエストリアンセンター」を併設しています。そこで競技会向けの馬のトレーニングと元競走馬のリトレーニングの両方を行っています。

エクエストリアンセンターには、うちのスタッフの中で試験を受けて選び抜かれた「グレナディール(トップライダー)」が所属しているので、元競走馬の若馬を預かり、乗馬レッスンに合うのかそれとも競技に向くのかを見極めた上で育て、全国のクレインに渡していく形になります。グレナディールには日本国内の競技を制覇するという目標があり、その過程で得られた経験や技術・知識を乗馬クラブクレインの会員さんにも還元していきたいと考えています。


元競走馬のリトレーニングの実際

── 誰でも簡単にリトレーニングができるわけではなく、国内競技の制覇を目指すような選手たちだからこそ、元競走馬を乗馬レッスンもしくは競技会に向けてつくり変えていくことができるという訳ですね。 …
本コンテンツは、プレミアム会員登録でご覧いただけます。
全文5257文字 (現在2266文字まで表示)

プレミアム会員ご案内
すでにプレミアム会員の方は ログイン してご覧ください
前後の記事
第133回 引退競走馬のリトレーニング現場を訪ねてきました
著者
治郎丸敬之
新しい競馬の雑誌「ROUNDERS」編集長。週刊Gallopにてコラムを連載中。当コラムの書籍も発刊
馬体の見かた講座
2024年G1サラブレッドクラブ募集馬インタビュー 2024年社台サラブレッドクラブ募集馬インタビュー [新種牡馬] クリソベリル、ダノンキングリー、ポエティックフレア産駒の傾向と対策 [新種牡馬] コントレイル、シスキン産駒の傾向と対策 引退競走馬のリトレーニング現場を訪ねてきました 生産者に聞く「スタリオンパレードでの種牡馬の見かた」 【種牡馬別】キタサンブラック産駒の見かた 「腰の高さ」と「胴伸び」に見る競走馬の成長曲線 競走馬のメンテナンス・手前替え・息の入り 馬の歩きを見るプロ・佐藤駿さんに聞く走る馬の見分け方 2023春クラシック活躍馬の馬体分析【牝馬編】 2023春クラシック活躍馬の馬体分析【牡馬編】 2023年ウインレーシングクラブ募集馬インタビュー 2023年社台サラブレッドクラブ募集馬インタビュー 2023年G1サラブレッドクラブ募集馬インタビュー [新種牡馬] ナダル、ルヴァンスレーヴ産駒の傾向と対策 [新種牡馬] サートゥルナーリア、アドマイヤマーズ産駒の傾向と対策 最近の社台SS~オルフェーヴルとキタサンブラック 「キ甲の成長」と「適性」の関係を実例から学ぶ 【種牡馬別】モーリス産駒編 【種牡馬別】ドゥラメンテ産駒編 出資馬の「未来の姿」を想像するために必要なこと 上手獣医師に聞く「鼻出血や心房細動は再発しやすい?」 上手獣医師に聞く「募集時のウォーキング動画を見るときのポイントは?」 2022春クラシック活躍馬の馬体分析【牡馬編】 2022春クラシック活躍馬の馬体分析【牝馬編】 2022年ウインレーシングクラブ推奨1歳馬を見てきました 2022年社台サラブレッドクラブ推奨1歳馬を見てきました 2022年G1サラブレッドクラブ推奨1歳馬を見てきました [新種牡馬] レイデオロ・ニューイヤーズデイ産駒の傾向と対策 [新種牡馬] ブリックスアンドモルタル・スワーヴリチャード産駒の傾向と対策 斉藤崇史厩舎・福田調教助手に聞く「口向き」の深い話 競走馬の「口向きが悪い」とはどういうこと? 【種牡馬別】キズナ産駒編 競走馬の「背中が良い」とはどういうこと? 岡田牧雄氏に聞く 「現役種牡馬13頭の評価と馬体の見かた」 岡田牧雄氏に聞く「馬を見る上で大切にすべきこと」 インゼルTC代表に聞く 設立の経緯と推奨馬5頭 2021年活躍3歳馬の馬体分析【マイル・ダート編】 2021春クラシック活躍馬の馬体分析 社台サラブレッドクラブ 2021推奨募集馬インタビュー G1サラブレッドクラブ 2021推奨募集馬インタビュー [新種牡馬]マインドユアビスケッツ、サトノクラウン、レッドファルクス産駒の傾向と対策 [新種牡馬]サトノダイヤモンド、リアルスティール産駒の傾向と対策 【種牡馬別】ジャスタウェイ産駒編 「馬体の緩さ」をあらためて整理する【後編】 「馬体の緩さ」をあらためて整理する【前編】 【種牡馬別】エピファネイア産駒編 三冠牝馬デアリングタクトの全妹に会ってきました ファンディーナの初仔で学ぶ当歳馬の見かた 一口馬主は血統の割に「高い馬」「安い馬」どちらを狙うべきか 個人馬主として、重賞馬に出会うまでに学んだこと 2020春クラシック活躍馬の馬体分析【牡馬編】 2020春クラシック活躍馬の馬体分析【牝馬編】 G1サラブレッドクラブ 2020推奨募集馬インタビュー 社台サラブレッドクラブ 2020推奨募集馬インタビュー イスラボニータ、ロゴタイプ、サトノアラジン産駒の傾向と対策 ドレフォン、キタサンブラック産駒の傾向と対策 エピファネイア&キズナの好発進とこれからの社台SS 【種牡馬別】ルーラーシップ産駒編 下村獣医師に聞く[見学ツアーで馬を見るときのポイント] 下村獣医師に聞く[馬体が「ゆるい」とは?] 下村獣医師に聞く[去勢の狙いとメカニズム] ノーザンファーム空港でTCライオン募集馬を見てきました セリ市で学ぶ:馬を間近で見る実践 セリ市で学ぶ:背中の筋肉の見かた 馬体のメリハリ、目、顔つき 毛艶の良さから分かること 2019年社台サラブレッドクラブ推奨1歳馬を見てきました [新種牡馬]ミッキーアイル&エピファネイア・キズナ・リアルインパクト [新種牡馬]モーリス産駒の傾向と対策 [新種牡馬]ドゥラメンテ産駒の傾向と対策 新種牡馬の産駒を見る上で大切にすべきこと 【種牡馬別】キンシャサノキセキ産駒編 馬体のバランスを実例から見る 馬の動きを「メトロノーム」のイメージで見る 現役馬と1歳馬の違い、牡馬と牝馬の違い 「背中が良い」とはどんな馬? 素質以外に重要な要素 ゲートの出方は天性のもの? 胴体から距離適性を見分ける セリ上場馬とクラブ募集馬の違い 【種牡馬別】ロードカナロア産駒編 【種牡馬別】オルフェーヴル産駒編 下村獣医師に聞く6[丈夫な馬体とは] 下村獣医師に聞く5[気性の見分け方] 梁川正普氏インタビュー【後編】 梁川正普氏インタビュー【前編】 秋田博章氏インタビュー【後編】 秋田博章氏インタビュー【中編】 秋田博章氏インタビュー【前編】 下村獣医師に聞く4[脚元の健康] 下村獣医師に聞く3[ノドの病気] 下村獣医師に聞く2[疲れやすい馬体とは] 下村獣医師(社台F)に聞く1[OCDと骨瘤] 【応用理論】2)馬体評価プロセスの体系化 【応用理論】1)より実践的な馬体の見かたへ 【種牡馬別】シンボリクリスエス産駒編 【種牡馬別】ブラックタイド産駒編 【種牡馬別】クロフネ産駒編 【種牡馬別】ゴールドアリュール産駒編 【種牡馬別】ハービンジャー産駒編 ハリー・スウィーニ氏インタビュー【後編】 ハリー・スウィーニ氏インタビュー【中編】 ハリー・スウィーニ氏インタビュー【前編】 【種牡馬別】ネオユニヴァース産駒編 【種牡馬別】ダイワメジャー産駒編 【種牡馬別】ハーツクライ産駒編 【種牡馬別】キングカメハメハ産駒編 【種牡馬別】ディープインパクト産駒編 岡田牧雄氏インタビュー【後編】 岡田牧雄氏インタビュー【中編】 岡田牧雄氏インタビュー【前編】 基礎編を振り返って 「歩様」は前から見ると分かりやすい 「歩様」を見る際の4つのポイント 歩き方の種類と「歩様」の基礎 「内向・外向」、「後肢」の肢勢 馬の肢勢~「前肢」の注意点 「飛節」を見るポイント 「後ろ脚の筋肉」の見かた 馬の生命線となる「蹄」 脚下のパーツ「球節」「繋」 前脚のパーツ「前腕」「膝」「管」 肺と心臓をあらわす「胸」 「尻」と「尻尾」の見かた 「背中」の見かたと「腹」との関係 「首」「き甲」「肩」を見る時のポイント 心を映し出す「目」と「耳」 理想的な「頭部」とは? さまざまなプロポーションの見方 馬体のプロポーションから分かること 父に似ていることには意味がある 美点を見るか欠点を見るか はじめに
(連載中)