2021-06-12現在データ
HOME > ノウハウ読み物 > 秋田博章氏インタビュー【前編】 【馬体の見かた講座】
馬体の見かた講座
馬を見る上での考え方から各馬体パーツの基本、種牡馬毎の特徴、専門家へのインタビューも
治郎丸敬之 著 / 連載中

45.秋田博章氏インタビュー【前編】

日々サラブレッドと向き合いながら、馬を見ることを仕事としている競馬関係者の方々へのインタビュー。今回からご登場頂く4人目は、ノーザンファームの元場長であり、現在キャロットクラブの取締役の秋田博章さんです。

前回までの下村獣医師編はまだ続きますが、かなりの長編となってまいりましたので、後日あらためて再開させて頂きます。楽しみにお待ちください。

秋田博章さんプロフィール

1948年生。1980年代に旧社台ファームに入り、吉田善哉氏に師事。1993年にノーザンファームの場長に就任し、エアグルーヴやディープインパクト、キングカメハメハ、ジェンティルドンナなど、星の数ほどの名馬の生産から育成に携ってきた。2013年に同顧問。現在はキャロットクラブの取締役を務めている。

馬の見かたに絶対的なものはない

―秋田さんなくして今のノーザンファームの隆盛はなかったはずです。これまで秋田さんがあらゆる媒体にて語ってこられた競馬に対する考え方や見識を私は読んできましたので、こうして改めてお話を伺えるということで、今日は少し緊張しています。歴代の名馬たちをその目で見て育ててきた経験をもとに、馬の見かたについて教えてもらえませんか。


秋田博章氏(以下、秋田) 私も緊張していますよ(笑)。私は獣医が本業ということもあり、馬の能力と欠点とは違うと思っています。たとえ身体のどこかに悪い箇所があったとしても、克服して走ってしまう馬もいます。セリ市に行くと、馬を見ることに関してプロフェッショナルな人たちが集まっているわけですが、彼らの目をかいくぐるようにして、たとえば最近の日本ではモーリスとか、世界的にはサンデーサイレンスなどが、評価を覆して実際にはあれだけ走ったりします。馬の見かたに絶対的なものはないのです。


肢勢ひとつを取ってみても、種牡馬の中にもいろいろな肢勢の馬がいます。種牡馬というのは、ほとんどの場合において実戦で走った(良い成績を残した)馬ばかりですが、彼らの中にも、たとえば飛節が極端に折れていたり、見てすぐ分かるぐらいのオフセット(※)であったりと、明らかに欠点と思えるような肢勢をしている馬はたくさんいます。私はオフセットの馬でも気にせずに買いますが、オフセットの馬は欠陥として昔から避けられてきました。せっかく能力があるにもかかわらず、オフセットであるばかりに評価されず売れないというケースはごまんとあったのです。
※肢勢やオフセット等の用語は本連載第17回第18回で解説しています

先ほど申し上げたサンデーサイレンスは、飛節が深く折れすぎていて、日本に連れて来られた当初は、その点をずいぶんと悪く言われたものでした。またトニービンは管が極端に細く、飛節を横に振ったり、スペイン常歩(なみあし)のような歩き方をするので、多くの馬を見られると言われていた人たちからは批判的な目で見られていました。

対して、同じような時期に種牡馬として入ってきたパドスールやジャッジアンジェルーチ、ノーリュートなどは、文句なしの馬体だと言われていました。その後の種牡馬としての活躍を考えると、まったく逆の結果が出ているのですから不思議です。どこまで欠点を許容できるかどうかは難しく、私は馬喰ではありませんし、肢勢についてモノを言うのは非常に危険だなと思います。

肢勢よりも重視すべき点

― 以前、二ノ宮敬宇調教師に話を聞いた際も、アメリカには考えられないぐらい肢勢の悪い馬がゴロゴロいたと語ってくれました。向こうの人たちは肢勢をほとんど気にしませんよね。日本の競馬関係者が気にしすぎているのかもしれません。


秋田 私がよりどころにしているのは、そのような肢勢が良く映らない馬であっても、歩かせたときの動きが非常にスムーズで柔らかいかという点です。 …
本コンテンツは、プレミアム会員登録でご覧いただけます。
全文2579文字 (現在1573文字まで表示)

プレミアム会員ご案内
すでにプレミアム会員の方は ログイン してご覧ください
著者
治郎丸敬之
新しい競馬の雑誌「ROUNDERS」編集長。週刊Gallopにてコラムを連載中。競馬ブログ「ガラスの競馬場」を主宰。当コラムの書籍も発売中
馬体の見かた講座
社台サラブレッドクラブ 2021推奨募集馬インタビュー G1サラブレッドクラブ 2021推奨募集馬インタビュー [新種牡馬]マインドユアビスケッツ、サトノクラウン、レッドファルクス産駒の傾向と対策 [新種牡馬]サトノダイヤモンド、リアルスティール産駒の傾向と対策 【種牡馬別】ジャスタウェイ産駒編 「馬体の緩さ」をあらためて整理する【後編】 「馬体の緩さ」をあらためて整理する【前編】 【種牡馬別】エピファネイア産駒編 三冠牝馬デアリングタクトの全妹に会ってきました ファンディーナの初仔で学ぶ当歳馬の見かた 一口馬主は血統の割に「高い馬」「安い馬」どちらを狙うべきか 個人馬主として、重賞馬に出会うまでに学んだこと 2020春クラシック活躍馬の馬体分析【牡馬編】 2020春クラシック活躍馬の馬体分析【牝馬編】 G1サラブレッドクラブ 2020推奨募集馬インタビュー 社台サラブレッドクラブ 2020推奨募集馬インタビュー イスラボニータ、ロゴタイプ、サトノアラジン産駒の傾向と対策 ドレフォン、キタサンブラック産駒の傾向と対策 エピファネイア&キズナの好発進とこれからの社台SS 【種牡馬別】ルーラーシップ産駒編 下村獣医師に聞く[見学ツアーで馬を見るときのポイント] 下村獣医師に聞く[馬体が「ゆるい」とは?] 下村獣医師に聞く[去勢の狙いとメカニズム] ノーザンファーム空港でTCライオン募集馬を見てきました セリ市で学ぶ:馬を間近で見る実践 セリ市で学ぶ:背中の筋肉の見かた 馬体のメリハリ、目、顔つき 毛艶の良さから分かること 2019年社台サラブレッドクラブ推奨1歳馬を見てきました なぜ社台ファームは坂路を「つくり直した」のか [新種牡馬]ミッキーアイル&エピファネイア・キズナ・リアルインパクト [新種牡馬]モーリス産駒の傾向と対策 [新種牡馬]ドゥラメンテ産駒の傾向と対策 新種牡馬の産駒を見る上で大切にすべきこと 【種牡馬別】キンシャサノキセキ産駒編 馬体のバランスを実例から見る 馬の動きを「メトロノーム」のイメージで見る 現役馬と1歳馬の違い、牡馬と牝馬の違い 「背中が良い」とはどんな馬? 素質以外に重要な要素 ゲートの出方は天性のもの? 胴体から距離適性を見分ける セリ上場馬とクラブ募集馬の違い 【種牡馬別】ロードカナロア産駒編 【種牡馬別】オルフェーヴル産駒編 下村獣医師に聞く6[丈夫な馬体とは] 下村獣医師に聞く5[気性の見分け方] 梁川正普氏インタビュー【後編】 梁川正普氏インタビュー【前編】 秋田博章氏インタビュー【後編】 秋田博章氏インタビュー【中編】 秋田博章氏インタビュー【前編】 下村獣医師に聞く4[脚元の健康] 下村獣医師に聞く3[ノドの病気] 下村獣医師に聞く2[疲れやすい馬体とは] 下村獣医師(社台F)に聞く1[OCDと骨瘤] 【応用理論】2)馬体評価プロセスの体系化 【応用理論】1)より実践的な馬体の見かたへ 【種牡馬別】シンボリクリスエス産駒編 【種牡馬別】ブラックタイド産駒編 【種牡馬別】クロフネ産駒編 【種牡馬別】ゴールドアリュール産駒編 【種牡馬別】ハービンジャー産駒編 ハリー・スウィーニ氏インタビュー【後編】 ハリー・スウィーニ氏インタビュー【中編】 ハリー・スウィーニ氏インタビュー【前編】 【種牡馬別】ネオユニヴァース産駒編 【種牡馬別】ダイワメジャー産駒編 【種牡馬別】ハーツクライ産駒編 【種牡馬別】キングカメハメハ産駒編 【種牡馬別】ディープインパクト産駒編 岡田牧雄氏インタビュー【後編】 岡田牧雄氏インタビュー【中編】 岡田牧雄氏インタビュー【前編】 基礎編を振り返って 「歩様」は前から見ると分かりやすい 「歩様」を見る際の4つのポイント 歩き方の種類と「歩様」の基礎 「内向・外向」、「後肢」の肢勢 馬の肢勢~「前肢」の注意点 「飛節」を見るポイント 「後ろ脚の筋肉」の見かた 馬の生命線となる「蹄」 脚下のパーツ「球節」「繋」 前脚のパーツ「前腕」「膝」「管」 肺と心臓をあらわす「胸」 「尻」と「尻尾」の見かた 「背中」の見かたと「腹」との関係 「首」「き甲」「肩」を見る時のポイント 心を映し出す「目」と「耳」 理想的な「頭部」とは? さまざまなプロポーションの見方 馬体のプロポーションから分かること 父に似ていることには意味がある はじめに 美点を見るか欠点を見るか
(連載中)