一口ライフをもっと楽しくもっと便利に! 一口馬主の総合情報サイト
2020-10-24現在データ
HOME > ノウハウ読み物 > 【馬体の見かた講座】83.2020春クラシック活躍馬の馬体分析【牝馬編】
馬体の見かた講座
馬を見る上での考え方から各馬体パーツの基本、種牡馬毎の特徴、専門家へのインタビューも
治郎丸敬之 著 / 連載中

2020春クラシックで活躍したクラブ馬の馬体分析【牝馬編】

活躍馬の募集時馬体を振り返る
一口馬主DBのコンテンツのひとつに、過去の名馬の募集時代を振り返る、名馬の募集カタログがあります。連載は終了していますが、僕もたまに思い立ったように眺めてみることがあります。特にロードカナロアの募集時の写真は名画を鑑賞するように繰り返し見て、目に焼き付けていますし、マイネルキッツやウインバリアシオンの典型的なステイヤー体型も忘れないように脳裏に記憶させています。

しかし、クラシックで活躍する馬たちの血統が目まぐるしく移り変わっていくように、馬体も少しずつではありますが変化を重ねています。馬体に古いも新しいもなく、名画は時代を超えて名画ではあるのですが、やはり流行りの傾向や進化した形も見られるものです。

今春のクラシック戦線では、クラブ馬の活躍が目立ちました。せっかくですからこの機会に、名馬の募集カタログをアップデートするつもりで、今年度のクラシック活躍馬の募集時の写真や動画を振り返って見ながら、今後の出資にも役立てて行きましょう。

今年は本当にたくさんの活躍馬が出ましたので、牡馬と牝馬とで回を分け、今回まずは牝馬編として9頭の活躍馬を見ていきましょう。

1. デアリングタクト

撮影時期推定:1歳9月頃
ウォーキング動画
デアリングタクト ノルマンディーオーナーズクラブ
父 エピファネイア 2017-04-15生
募集価格:1760万円 / 400口 (一口 4.4万円)
優駿牝馬(G1) 優勝 / 桜花賞(G1) 優勝 / 秋華賞(G1) 優勝 / エルフィンS(OP) 優勝 / 2歳新馬 優勝
当然のことながら、桜花賞とオークスを圧倒的な力差で勝利し、2冠馬となったデアリングタクトから。今回分析する9頭の中でも最も遅い時期(1歳の9月中旬)に撮影されたカタログ写真だとしても、9頭の中で最も雄大な馬体を誇っているのがひと目で分かります。表現は月並みですが、牡馬顔負けの馬体ですね。この時点ですでに前後躯にしっかり実が入って、胴部にも手脚にも長さがあり、馬体全体のフレームが大きく、首差しの角度も理想的です。

牝馬離れしたフレームの立派さは、父エピファネイア譲りでもあり、母の父キングカメハメハから受け継いだと解釈することもできます。馬体のスケールという点においては、募集時から群を抜いていたということであり、馬体派の一口ファンにとっては出資しやすかったのではないでしょうか。たとえばアーモンドアイのような、募集時のカタログ写真から素質を見抜くことが極めて難しいタイプではなかったということです。

初年度産駒からデアリングタクトという大物を出したエピファネイアですが、僕は種牡馬としての課題は気性面だと考えていました。エピファネイアの父であるシンボリクリスエスの産駒(特に牝馬)がやや期待外れに終わってしまったのは、気性の激しさが大きな原因でした。

エピファネイアも現役時代はコントロールが難しい面があり、育成から調教、レースにおける騎乗に至るまで、ひとつ間違うと潜在能力を発揮できなかった可能性もありました。産駒にも気性の激しさは受け継がれるはずで、それをレースに行っての闘争心や前向きさ(前進気勢)に転換することができれば、大成する可能性を十分に秘めていると占っていたのです。

気性の激しさが仇となってしまっているエピファネイア産駒もいるはずですが、デアリングタクトがそうならなかったのは、母の父キングカメハメハの影響が大きいのではないでしょうか。キングカメハメハは母の父として底力と気性の良さを伝えると僕は考えていますので、デアリングタクトはまさに父と母系の良いところ取りをした馬です。

それはスケールの大きな馬体だけではなく、凛とした表情から伝わってくる賢さにも表れていますね。ウォーキング動画を見ても、そのおっとりとした気性が伝わってきます。まさかここまで走るとは誰も思っていなかったでしょうが、すでに募集の時点で、肉体面においても精神面においても非の打ち所がなく、完成度の高い、お買い得の馬であったことは間違いありません。


2. レシステンシア

撮影時期推定:1歳8月頃
レシステンシア キャロットクラブ
父 ダイワメジャー 2017-03-15生
募集価格:2600万円 / 400口 (一口 6.5万円)
阪神ジュベナイルF(G1) 優勝 / 桜花賞(G1) 2着 / NHKマイルカップ(G1) 2着 / ファンタジーS(G3) 優勝 / チューリップ賞(G2) 3着 / 2歳新馬(牝) 優勝
桜花賞とNHKマイルCはともに2着と惜しい競馬をしましたが、阪神ジュベナイルフィリーズでは驚異的なスピード能力を見せて圧勝したレシステンシアは、デアリングタクトとは好対照な馬体です。

胴部は詰まって映るので、距離適性としてはマイル戦が持つかどうかというイメージですね。ダイワメジャー産駒らしい馬で、脚も真っ直ぐに伸びて健康そうですし、しっかりした腹袋の大きさからはカイ葉食いの良さが伝わってきます。前後躯にしっかりと実が入り、筋肉量が豊富で、特にトモの実の入りには目を見張るものがあります。きりっとした目つきを見ても、気性の激しさをスピードに転換していくタイプの馬であることが分かります。

僕は以前このコラムにおいて、ダイワメジャーの一流馬を狙うための条件として、以下のように語りました。

ダイワメジャー産駒は安定して走るのが特徴なのですが、あえて一流馬もしくは超がつく一流馬を狙うとすれば、筋肉の柔らかい馬、そして硬くならない馬を探すべきです。筋肉の柔らかさに関しては、さすがに募集時の写真だけでは分かりにくいので、募集馬見学ツアーに行ったり、動画(DVD)を観たりするべきです。力強いというよりは、むしろ滑らかに柔らかく歩けている馬を見つけるということなのですが、実際にレースを使われてから筋肉が硬くなってくることが多いので、さすがにそこまでは見極められません。答えになっていないかもしれませんが、馬格や馬体の大きさなどといったハード面ではなく、筋肉の質といったソフト面は、実際にたずさわっている関係者からの情報や血統を頼りにするしかありませんね。いずれにしても、ダイワメジャー産駒が大成するかどうかは筋肉の柔らかさにかかっていることは確かです。



まさにレシステンシアは大成したダイワメジャー産駒です。会員の方はぜひともウォーキング動画を観てもらいたいのですが、身体を大きく使って、ゆっくりと歩けていて好感が持てますね。この時点では筋肉の柔らかさが伝わってきて、出資したいダイワメジャー産駒です。

ただし、その後、調教を重ねて、レースを使われて筋肉の質がどうなるかが課題ですので、こればかりは競走馬としてデビューしてみないと分かりません。実際にレシステンシアも阪神ジュベナイルFのときは柔らかな筋肉がふっくらと付いていましたが、桜花賞やNHKマイルC時は完成されてきたのと同時に、馬体が枯れて(余計な筋肉が削ぎ落されて)、筋肉の質としてはやや硬くなってきた印象を僕は抱いていました。秋以降、柔らかみが保てなくなってくるとすれば、戦績は下降気味になるかもしれません。できるだけレースを使わずに、狙ったレースだけを走らせた方が良いタイプであることは間違いないでしょう。


3. ウインマリリン

撮影時期推定:1歳6月頃
ウォーキング動画
ウインマリリン ウインレーシングクラブ
父 スクリーンヒーロー 2017-05-23生
募集価格:2400万円 / 400口 (一口 6万円)
フローラS(G2) 優勝 / 優駿牝馬(G1) 2着 / 2歳新馬 優勝
次に日高の生産馬であるウインマリリンです。フローラSは実に強い競馬でしたし、オークスも横山典弘騎手の好騎乗もありましたが大健闘の2着でした。

後に登場するウインマイティーと同じく、募集時期だからといって馬がつくり込まれていないため、これまで登場した馬たちの募集時と比べてしまうと、正直見栄えは良くありません。

これはセリ市にも当てはまり、できるだけ高く売ろうと考えると、できるだけ馬を良く見せようとするのは関係者の心理として当然です。セリ当日に向けて、必要以上に栄養価の高い餌をたくさん食べさせたり、筋肉を大きく見せるために必要以上の負荷をかけて運動させたりして、馬をつくるのです。馬をきちんと手入れすることは大切ですが、必要以上につくりすぎてしまうと、馬の自然な成長を阻害してしまうことにつながります。いったん馬をつくって、元に戻すというだけで、この時期の若駒にとっては大きな負担になるのです。セリで高く売れたのは良いけれど、その後、馬が萎んで崩れてしまって…、と嘆く関係者は少なくありません。だから、見栄えは良くないかもしれないけれど、あまり手を加えることなく、あえてそのままの姿でいる方を選択する生産者も増えてきています。長い目で見ると、その方が馬にとっても購買者にとっても良いからです。

同様の潔さがウインの募集馬からは感じられますね。こういう場合は、パッと見の良さではなく、その馬の本質を馬体から観ようとすべきです。ウインマリリンは、5月23日の遅生まれとは思えないほど、馬体のフレームが大きくて、付くべきところに筋肉が付いてしっかりとしていますね。ひと言で言うと、バランスが抜群に良いです。首の太さや長さ、そして角度、前後躯の適度な発達、腹袋の大きさなど、あと1年後には良い馬になっているのだろうことが想像できる馬体です。本質を観るということは、未来を想像することに近いかもしれません。


4. ウインマイティー

撮影時期推定:1歳6月頃
ウォーキング動画
ウインマイティー ウインレーシングクラブ
父 ゴールドシップ 2017-04-01生
募集価格:1400万円 / 400口 (一口 3.5万円)
優駿牝馬(G1) 3着 / 忘れな草賞(OP) 優勝 / 2歳新馬(牝) 4着
続いて、オークスではあわやのシーンを作り出して3着と好走したウインマイティーです。 …
本コンテンツは、プレミアム会員登録でご覧いただけます。
全文7665文字 (現在4083文字まで表示)

プレミアム会員ご案内
すでにプレミアム会員の方は ログイン してご覧ください
著者
治郎丸敬之
新しい競馬の雑誌「ROUNDERS」編集長。週刊Gallopにてコラムを連載中。競馬ブログ「ガラスの競馬場」を主宰。当コラムの書籍も発売中
馬体の見かた講座
87.ファンディーナの初仔で学ぶ当歳馬の見かた 86.一口馬主は血統の割に「高い馬」「安い馬」どちらを狙うべきか 85.個人馬主として、重賞馬に出会うまでに学んだこと 84.2020春クラシック活躍馬の馬体分析【牡馬編】 83.2020春クラシック活躍馬の馬体分析【牝馬編】 82.社台サラブレッドクラブ 2020推奨募集馬インタビュー 81.G1サラブレッドクラブ 2020推奨募集馬インタビュー 80.イスラボニータ、ロゴタイプ、サトノアラジン産駒の傾向と対策 79.ドレフォン、キタサンブラック産駒の傾向と対策 78.エピファネイア&キズナの好発進とこれからの社台SS 77.【種牡馬別】ルーラーシップ産駒編 76.下村獣医師に聞く[見学ツアーで馬を見るときのポイント] 75.下村獣医師に聞く[馬体が「ゆるい」とは?] 74.下村獣医師に聞く[去勢の狙いとメカニズム] 73.ノーザンファーム空港でTCライオン募集馬を見てきました 72.セリ市で学ぶ:馬を間近で見る実践 71.セリ市で学ぶ:背中の筋肉の見かた 70.馬体のメリハリ、目、顔つき 69.毛艶の良さから分かること 68.2019年社台サラブレッドクラブ推奨1歳馬を見てきました 67.なぜ社台ファームは坂路を「つくり直した」のか 66.[新種牡馬]ミッキーアイル&エピファネイア・キズナ・リアルインパクト 65.[新種牡馬]モーリス産駒の傾向と対策 64.[新種牡馬]ドゥラメンテ産駒の傾向と対策 63.新種牡馬の産駒を見る上で大切にすべきこと 62.【種牡馬別】キンシャサノキセキ産駒編 61.馬体のバランスを実例から見る 60.馬の動きを「メトロノーム」のイメージで見る 59.現役馬と1歳馬の違い、牡馬と牝馬の違い 58.「背中が良い」とはどんな馬? 57.素質以外に重要な要素 56.ゲートの出方は天性のもの? 55.胴体から距離適性を見分ける 54.セリ上場馬とクラブ募集馬の違い 53.【種牡馬別】ロードカナロア産駒編 52.【種牡馬別】オルフェーヴル産駒編 51.下村獣医師に聞く6[丈夫な馬体とは] 50.下村獣医師に聞く5[気性の見分け方] 49.梁川正普氏インタビュー【後編】 48.梁川正普氏インタビュー【前編】 47.秋田博章氏インタビュー【後編】 46.秋田博章氏インタビュー【中編】 45.秋田博章氏インタビュー【前編】 44.下村獣医師に聞く4[脚元の健康] 43.下村獣医師に聞く3[ノドの病気] 42.下村獣医師に聞く2[疲れやすい馬体とは] 41.下村獣医師(社台F)に聞く1[OCDと骨瘤] 40.【応用理論】2)馬体評価プロセスの体系化 39.【応用理論】1)より実践的な馬体の見かたへ 38.【種牡馬別】シンボリクリスエス産駒編 37.【種牡馬別】ブラックタイド産駒編 36.【種牡馬別】クロフネ産駒編 35.【種牡馬別】ゴールドアリュール産駒編 34.【種牡馬別】ハービンジャー産駒編 33.ハリー・スウィーニ氏インタビュー【後編】 32.ハリー・スウィーニ氏インタビュー【中編】 31.ハリー・スウィーニ氏インタビュー【前編】 30.【種牡馬別】ネオユニヴァース産駒編 29.【種牡馬別】ダイワメジャー産駒編 28.【種牡馬別】ハーツクライ産駒編 27.【種牡馬別】キングカメハメハ産駒編 26.【種牡馬別】ディープインパクト産駒編 25.岡田牧雄氏インタビュー【後編】 24.岡田牧雄氏インタビュー【中編】 23.岡田牧雄氏インタビュー【前編】 22.基礎編を振り返って 21.「歩様」は前から見ると分かりやすい 20.「歩様」を見る際の4つのポイント 19.歩き方の種類と「歩様」の基礎 18.「内向・外向」、「後肢」の肢勢 17.馬の肢勢~「前肢」の注意点 16.「飛節」を見るポイント 15.「後ろ脚の筋肉」の見かた 14.馬の生命線となる「蹄」 13.脚下のパーツ「球節」「繋」 12.前脚のパーツ「前腕」「膝」「管」 11.肺と心臓をあらわす「胸」 10.「尻」と「尻尾」の見かた 9.「背中」の見かたと「腹」との関係 8.「首」「き甲」「肩」を見る時のポイント 7.心を映し出す「目」と「耳」 6.理想的な「頭部」とは? 5.さまざまなプロポーションの見方 4.馬体のプロポーションから分かること 3.父に似ていることには意味がある 2.美点を見るか欠点を見るか 1.はじめに
(連載中)