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馬体の見かた講座
馬を見る上での考え方から各馬体パーツの基本、種牡馬毎の特徴、専門家へのインタビューも
治郎丸敬之 著 / 連載中

G1サラブレッドクラブに聞く
今年の推奨募集馬

G1TC/追分ファームインタビュー2020
今年は初めて追分ファームに実馬を見に行くのを楽しみにしていましたが、社会情勢により見学ツアーもなくなり、個別の見学も休止という状況になってしまい、非常に残念で仕方ありません。その思いは他の出資者の方々も同じでしょうから、各馬ができる限り立体的に感じられるように、G1サラブレッドクラブの長澤さんと追分ファームの井上さんにインタビューさせていただき、カタログや動画だけでは伝わり切らない情報を提供したいと思います。


追分ファームと菜の花畑の風景(クラブ公式ツイッターより)
― 先日、G1サラブレッドクラブの公式ツイッターにて、追分ファーム周辺にある菜の花畑のスポットが紹介されており、その美しい風景に心が癒されました。一面に広がる菜の花畑を目の前に想像しながら、インタビューさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。


G1TC 長澤氏(以下、長澤) こちらこそ、よろしくお願いします。あの風景は、追分ファームの本場の方ですね。例年どおり牧場見学ツアーがあれば、こういった景色もご覧いただけたのに。私たちも誠に残念です。

G1サラブレッドクラブは今年で10周年を迎え、11回目の募集となります。追分ファームがメインですが、社台グループの4牧場(社台ファーム、ノーザンファーム、白老ファーム、追分ファーム)すべてから生産馬の提供を受けているのは当クラブの特徴のひとつです。


追分ファーム 井上氏(以下、井上) その中で、今回は私ども追分ファームの生産募集馬の中から、何頭かピックアップして紹介させてください。


― 追分ファームからは合計8頭の推奨馬を頂きましたので、一頭ずつ詳しくお話を聞かせてください。また、他の牧場生産の募集馬についても、最後に長澤さんから推奨馬リストを紹介頂ければと思います。


※以下、カタログ番号の若い順にインタビューを行っており、各馬の並びは推奨の順位を示すものではございません。


【1】フォーエバーモアの19(・募集番号G3)

4/3 美浦 鹿戸雄一 厩舎予定
ロードカナロア (母父 ネオユニヴァース)
3400万円 / 40 (1口 85万円)
― トップバッターは、フォーエバーモアの19ですね。フォーエバーモア自身も追分ファームの生産馬で、中央競馬で計4勝を挙げ、そのうちクイーンカップ(GⅢ)を勝利し、阪神ジュベナイルフィリーズで3着の実績がある名牝です。本馬は2番仔であり、お父さんがスクリーンヒーローからロードカナロアに変わりました。

カタログの立ち写真を見せてもらいましたが、正直驚きました。とにかく馬体のバランスが良くて、余計な肉がついておらず、非の打ち所がない理想的な立ち姿をしています。いかにも走るロードカナロア産駒らしいですね。僕は自分もひとりの出資者としてインタビューさせてもらっていますので、さすがに心が動かされました。



井上 おっしゃるように、当歳時からバランスの取れた好馬体の持ち主でしたし、顔つきには品があり、皮膚感も含めて全体的な雰囲気がとても良い馬です。付くべきところに筋肉がしっかり付いて、無駄のない馬体であり、その分、手先の軽さがあり、動かしてみて切れのある走りをしています。馬体の出来の良さだけではなく、血統面も含めて、自信を持ってピックアップさせてもらいました。お母さんのフォーエバーモアは、リリーバレーの育成馬としては初めてJRAの重賞を勝ってくれた馬であり、私たちとしても特に思い入れのある馬です。今回、父にロードカナロアを迎えたこともあり期待は大きいです。


― 個人的には、フォーエバーモアに名種牡馬の地位を不動なものにしたロードカナロアという配合で3400万円という募集価格は、かなり抑えられているなと感じます。


井上 そうですね。生まれが4月ということもあるのですが、体重だけでいうと少し小さめではあります。ただ、お母さんのフォーエバーモアもそうでしたが、体重の割に体高があり、四肢が長めの体型ですので、パッと見たときに小さいという感じは受けないと思います。最初は馬体の幅が薄くても、調教やレースを重ねつつ、少しずつ幅が出てきて成長していくのではないでしょうか。お母さんは芝の重賞だけではなく、古馬になってからダートのレースを勝ち、ダートのオープン戦や重賞路線でも走りましたから、本馬も体つきは変わっていく可能性はありますね。

ロードカナロアの仔は特に、調教がスタートして2歳の春ぐらいから大きく変わってくる馬が多いですし、この馬は現時点でもバランスの取れた馬体を誇っていますので、さらなる成長が楽しみです。体型や動きを見る限りは、芝でこその馬だと考えています。お母さんもデビューから2連勝して、阪神ジュベナイルフィリーズに駒を進め、3歳になってクイーンCを勝って、桜花賞、オークスのクラシック路線に乗ったように、やはり距離的にはマイルから中距離戦が適しているかなと思います。早い時期から活躍できるはずですので、桜花賞ではお母さんの無念を晴らしてもらいたいと願っています。


― 普段の性格や気性についても教えてもらえませんか?


井上 お父さんのロードカナロアの産駒は素直な気性の馬が多く、この馬も人間に対して従順です。ただ、周囲の物事や物音に対する反応の速さも持っていますので、そういう意味では、レースに行っての瞬発力として生きるはずです。性格は従順であっても鈍感なタイプの馬もいますが、この馬は違いますね。チャカチャカするのではなく、性格のメリハリがあるということです。オンとオフがしっかりしています。そうした反応の良さはとても大切だと思います。心身ともに素質の良さが伝わってくる馬です。


― 顔つきも良いですし、今おっしゃってくれた性格の良さが写真からも伝わってくるようです。お姉さん(父スクリーンヒーロー)との違いや似ている点はありますか?


井上 お姉さんは初仔ということもあって、馬体が小柄です。今、リリーバレーで調教を重ねており、現時点で410~420kgを推移しているぐらいの馬体重です。ただ、調教を重ねるにつれて動きは良くなっているので、さすがフォーエバーモアの仔だなと感じます。お姉さんに比べると本馬は大きめであり、最終的に450~460kgぐらいで走ることになると考えています。母フォーエバーモアも祖母エターナルビートも、それぐらいの馬体重で走っていた馬でしたから。


ロードカナロア牝馬らしい澄んだ瞳が印象的
体高はあるため筋肉が付くと迫力ある馬体になりそうだ




【2】メーデイアの19(・募集番号G7)

3/25 美浦 堀宣行 厩舎予定
ドゥラメンテ (母父 キングヘイロー)
3600万円 / 40 (1口 90万円)
― 続いてメーデイアの19です。母メーデイアはJBCレディスクラシックの勝ち馬であり、地方交流重賞を6勝した堅実なダートの名牝でしたね。本馬は3番仔であり、ひとつ上の兄(父キングカメハメハ)は6000万円で募集されていました。父が新種牡馬ドゥラメンテに変わって、どのあたりが違いますか?


井上 母はダートの牝馬チャンピオンであり、父には初年度産駒から評判の良いドゥラメンテを迎えた、今年度の募集馬の中でも目玉の1頭となります。この母系(一族)の特徴として、成長がゆっくりなタイプであることが挙げられます。お母さんのメーデイアもデビュー戦でタイムオーバーとなり、スーパー未勝利で何とか勝ち上がって、5歳になってようやく地方重賞を3連勝することができました。さらに一族のサングレーザーも、3歳の春のクラシックは出走できず、秋になって本格化した馬でした。レースを使いながら、素質に少しずつ磨きをかけていき、花開くというタイプの馬が多い一族です。

本馬の馬体を見てもらっても、まだ腰高で成長途上だと思わせますが、体のバランスは放牧を重ねるにつれて日に日に良くなっていますし、やはりこの牝系の血統どおりの成長力を秘めているのだなと感じます。


― お父さんのドゥラメンテも、トニービンが入っている影響か、産駒は成長がゆっくりという傾向がありますからね。 …
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第81回 G1サラブレッドクラブ 2020推奨募集馬インタビュー
著者
治郎丸敬之
新しい競馬の雑誌「ROUNDERS」編集長。週刊Gallopにてコラムを連載中。当コラムの書籍も発刊
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